『二月の勝者』 とスポーツ少年 〜中学受験か高校受験か

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中学受験
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『二月の勝者』のドラマが始まりました。中学受験をかなりの再現度でとりあげたドラマ、初回はサッカー少年にスポットをあてました。スポーツ少年は中学受験をすべきなのか?高校受験がよいのか?をテーマにお話します。

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『二月の勝者』とは

ドラマ『二月の勝者 絶対教室の合格』は、日本テレビで10月16日に放送が開始した、中学受験をテーマにしたドラマです。

二月の勝者-絶対合格の教室-
日本テレビ土曜ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』公式サイト。「高瀬志帆」原作の中学受験の実態をリアルに描いた人気マンガが待望のドラマ化!激変する受験界に舞い降りた、最強で最悪のスーパー塾講師・黒木蔵人(くろきくろうど)を「柳楽優弥」が演じます!!

原作は高瀬志帆さんの「二月の勝者-絶対合格の教室-」。小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載中です。

こんなコーナーも設けられるほど、原作は多くの書籍などを参考に描かれていて、業界でも、中学受験をかなりの再現度で表現していると話題です。

最近は、単行本の第13巻が発行されましたが、入試直前の12月、主人公のカリスマ中学受験講師黒木蔵人の保護者会での発言はTwitterでも多くの反応があり、一見の価値はあります。

ドラマ初回はスポーツ少年と中学受験がテーマ

「凡人こそ中学受験すべき」

そして、ドラマの初回は、新6年生の入塾希望者、三浦佑星くん(佐野祐徠)にスポットをあてています。
学校の成績クラスで1番の三浦くん、「有名大学の附属中」を目指して桜花ゼミナールの門を叩きました。
中学受験に前向きな母親、それに対して「サッカーを続けさせたい」と中学受験に反対の父親は、これからの努力次第でプロを目指すという考えです(この対比、塾あるあるですね)。
そして、入塾時のクラスは再開のRクラス、席次も一番下で偏差値は40です。

ちなみに偏差値40 の考え方については、あくまで優秀な中学受験生のなかでの位置なので、大学受験の一般的な模試での偏差値40とは大きく意味合いが異なるのは、ドラマで説明されているとおりです。

その父親に対して、黒木は「サッカーとの両立は難しい」「凡人こそ中学受験すべき」と畳み掛けます。

「スポーツ分野は本当に厳しい」

その根拠として、黒木が挙げたのは、次のようなデータです。

・全国のサッカー選手登録者数25万2745人
2020年プロになった選手は全カテゴリーで204人
つまり小学生時点で将来プロに慣れる確率は0.08%
・中学受験者数は首都圏で4万694人
御三家合格者数は男女合わせて1643人、つまり御三家に受かる確率約4%
その他有名私立まで入れればおよそ10%

そして「スポーツや美術、音楽など才能がものをいう分野は本当に厳しい。それに比べて勉強は格段に努力のリターンが得やすい。そしていまの佑星さんはその10%に入る可能性を持っています。それが凡人こそ中学受験すべき理由です」として、中学受験をすすめます。

この「凡人こそ中学受験すべき」「勉強は格段に努力のリターンが得やすい」という点は、私も多いに同意します

中学受験をすれば伸び盛りに部活に打ち込める?

ただし、以下の発言については、そのまま真に受けるのはちょっと危ないと思います。

高校入試でサッカーを中断することをよしとするのでしょうか
中学受験をすれば15歳の伸び盛りに部活を中断せずに打ち込めます。大学の附属校なら18歳での中断もなし。なのになぜ小6という時期にこだわるのでしょうか?」

特に打ち込んでいるサッカーを新小6という時期に中断してまで、「有名大学の附属中」を目指して中学受験に取り組むのはリスクが高いといえます。

高校でスポーツに打ち込む少年たちの多くは、現実的には高校受験でその学校に進みます。それは、このあと慶應高校野球部について述べますが、「有名大学の附属中」でも同様です。
ドラマでは、あくまで「サッカーも平凡」とみなした三浦くんに対して中学受験をすすめたのであって、決してプロとまでは言わなくても、全国レベルの高校の部活や、有名大学の体育会でスポーツに打ち込み、そして就職するという進路を望まれる場合は、決して中学受験がベストとは言い切れません。高校受験で推薦入学を目指すほうがよいケースもあるのです。

ドラマでは、新小6でのタイミングでの中学受験対策の開始を不安がる母親に対して、黒木は「私が合格させる」と請け負いますが、一般的に中学受験対策は、最低でも2年はかかります。新小4のタイミングから塾通いするのが一般的になっています。

余談ですが、中学受験生、とりわけ上位の受験生は学校の成績はトップクラスです。しかし、学校の成績がトップクラスの子が中学受験でいい成績をとれるわけではありません。さらには小学校の成績がトップクラスの子が中学校に進んでトップクラスを維持できるわけでもありません。小学校のときはクラスのトップだった子が、中学校では目立たない存在になり、進学する高校も公立の2番手校あたり、というのは決して珍しいケースではありません。
小学校の勉強と受験勉強のレベルには大きな差があるので、中学受験する場合は学校の成績はあまり関係なく、中学受験を前提としたハイレベルなテストで実力を測定することが大事です。

有名大学附属 推薦入試のある高校受験

慶應高校野球部のほとんどは高校からの「外部生」

では、「有名大学」を視野に入れたときに、中学受験が果たしてベターな選択といえるのでしょうか?
留意したいのは、高校受験には「推薦入試」という制度があることです。

「有名大学」といっても、早慶、MARCH、日東駒専とレベルはさまざまですが、いまは早慶でもスポーツに力を入れていて、高校入試では推薦入試を取り入れています
高校スポーツでいうと、早慶はともに野球の強豪校を抱えていますが、いずれも近年の甲子園出場校である早稲田実業や慶應義塾高校は、高校入試では推薦入試を取り入れています。

例えば慶應義塾高校野球部の2021年夏の登録メンバーの出身をまとめた表をご覧ください。

名前位置出身中学
1前田 晃宏投手3広島・公立中学
2吉開 鉄朗捕手2千葉・公立中学
3坪田 大郎内野手3大阪・公立中学
4宮原 慶太郎内野手2東京・公立中学
5今泉 将内野手3東京 慶應義塾中等部
6二宮 慎太朗内野手3愛知・公立中学
7権藤 大外野手3東京 慶應義塾中等部
8横地 広太外野手2東京・公立中学
9金岡 優仁外野手3滋賀・公立中学
10荒井 駿也控え3埼玉・公立中学
11宮腰 悠生控え2神奈川・公立中学
12渡辺 憩控え1千葉・公立中学
13小堀 政泰控え3東京・私立中学
14石崎 世龍控え2茨城・公立中学
15沖村 要控え2富山・公立中学
16八木 陽控え1愛知・公立中学
17松井 喜一控え1東京・公立中学
18大滝 祥也控え3神奈川 公立中学
19吉野 太陽控え2千葉・公立中学
20村上 迅太控え1東京・公立中学

ベンチ入り20人中、内部進学はわずか2人で、多くは高校からの入学者=外部生。推薦入試で入ってくるケースが一般的です。また、ほぼ全員が中学時代にシリアリーグのチームに所属しており、学校の部活動で野球をやっていたという生徒は皆無です。
(ちなみに、1番、前田晃宏さんは元プロ野球選手前田智徳さんの息子です。)
そもそも、中学生でスポーツというと「部活動」というイメージの方も多いかもしれませんが、近年は特に、スポーツに力を入れる中学生の多くは外部のチームに所属し、大会に出場しています。
近年では、「サッカーや野球をやらせたい。中学校に入ったらサッカー部や野球部で全国大会に」というのは、そうした上澄みを除いた層の考え方です。

有名大学附属の推薦の基準は高くはない

慶應高校の推薦入試の基準は次のようになっています。

慶應義塾高等学校 募集要項(2022年4月入学生)
【募集人員】
約40名
【出願資格】
出願時において以下の要件すべてを満たしていること。
1. 2022年3月31日までに学校教育における9年間の課程を修了、または修了見込みの者
2. 2007年4月1日までに出生した者
3. 本校の過年度の入学試験において出願資格を有したことがない者
4. 国内の高等学校に在籍したことがない者
5. 本校が第一志望である者
6. 出願時において、1.を満たすために最後に在籍している学校の校長の推薦を受けた者
7. 6.の学校が日本の中学校もしくはこれに準ずる学校や中等教育学校である場合は、出願時において中学3年次の9教科の成績合計が5段階評価で38以上である者
8. 中学校時代に、運動・文化芸術活動などにおいて、相応の成果を上げた者

実質的な条件は最後の2つです。
学校の成績でオール4+2をとって、運動・文化芸術活動などにおいて、相応の成果を上げれば、推薦入試を受けることができます
内申45点満点中38というのは、決して容易ではありませんが、学校の成績がトップクラスでなくても、慶應に入ることは可能なのです。一般入試で入るよりは勉強面においてはハードルは低くなりますし、慶應中等部や普通部は中学受験でしたら、超難関校の部類に入りますので、スポーツ少年にとってはもっとも慶應という学校に入れる可能性が高いのは、(大学の推薦は除けば)高校受験での推薦入学という選択肢になります。

全国レベルの生徒は高校推薦で有名校も現実的

文武両道でオール4以上なら早慶に楽に入れるというわけでは決してありません。推薦入学はそこまで甘くはないのが現状です。

さきほどの表をご覧いただいてわかるとおり、有名校をめぐっては、さまざまのスポーツや学術、芸術分野などで全国レベルの生徒が集まります。慶應高校に推薦入試を使って入れるのはあくまでスポーツなどで全国レベルの成果をおさめた生徒です。野球で言えば、強豪シニアチームなどで活躍し、全国大会で実績を残してきた子どもたちが中心になります。
あくまでそうした子たちは、高校受験のためにスポーツを中断することなく、推薦入学で私立の強豪校に進学してスポーツ、そして勉学を両立させて大学に進学、「慶應大学野球部」などの体育会所属歴を利用して、優位に就活を進めることも可能なわけです。
逆に言うと、スポーツでプロを目指すレベルの生徒なら、その実力だけで強豪校に進むことは可能ですが、そこまで行かなくても全国レベルの生徒でしたら、中学受験より高校受験で推薦入試を利用して、有名大学の附属校に進学するというのは現実的な選択なります。
これは、早慶に限らず、その他の大学附属校でも同様で、むしろ勉強ができなくても、ほぼスポーツの力だけで大学まで進学できることになります。

スポーツ推薦入学は事前の情報戦

なお、スポーツで実績をあげて推薦入学を目指す場合。必ず希望する部活動の関係者などにコンタクトをとるようにしてください。塾選びよりもよほど大事です。

例えば慶應高校野球部では、「受験生へ」というページを設け、部長の教諭へのアクセスが可能になっています。

慶應義塾高等学校 野球部 - 慶應義塾高等学校 野球部の公式サイトです。
慶應義塾高等学校 野球部の公式サイトです。

スポーツという勉強以外で顕著な成績をおさめ、実際に高校で活躍する即戦力を求めるのが推薦制度の趣旨である以上、学校側も表向きの募集以外の形を含めて、入学させたい生徒を探しています。
慶應高校の場合は内申38という基準を設けていますが、スポーツ三昧の子にとって決して楽な基準ではありませんので、補習塾や個別指導を受け入れてくれるOBを紹介するなど、受験生側からコンタクトをとれば、最大限のバックアップをしてくれるのです。
決して「裏口入学」はできませんが、「推薦」というテストの成績以外の要素での入学を希望する以上、直接、もしくは所属チームの監督などのルートを最大限駆使して合格を勝ち取る必要があります。
そして、こうした準備活動は、受験学年になってから始めても遅いので、希望する学校があるのであれば、早め早めに情報を集め、実際に動き、希望を周りにアピールしていくこともとても大事になります。

県大会レベルの「凡人」は中学受験の検討も

ここまでの話を整理しますと、スポーツで全国レベルの実力があるのであれば、中学受験で有名大学の附属校を目指す必要は必ずしもありません。高校受験で有名大学附属を目指して、学歴とスポーツの道の二兎を得ることは可能です。
一方、黒木の言う「凡人」「平凡な子」、厳しい言い方ですが、県大会出場レベルの子がスポーツで生きていくのは容易ではありません。高校入試でも都道府県大会レベルはわんさかいるため、推薦入試におけるアドバンテージは期待できません、
中学受験を悩まれるスポーツ少年は、小4ごろの段階でスポーツが「全国レベル」か否かを見極めて、その後の進路を検討するのが1つの考え方だと思います。

中学受験か高校受験か 選択は早めに!

なお、 スポーツ少年に限らず、ドラマにあるような「全員第一志望校合格」は現実的ではありません
ましてや、小6から中学受験対策を開始、ましてや黒木のように入塾テストの結果を見る前から合格を請け負うという塾というのは、実際はかなり眉唾ものです。
決して中学受験がすべてではないのですが、目指す以上は相応の準備期間が必要です。
また、高校受験を目指すにしても、中学受験で得られる「中高一貫」というメリットは失うことになりますので、いずれにしても、どういった中高生活もしくは大学生活を送りたいのか、そのためにはどういう進路をとるべきなのか、多くの中学受験生が通塾を本格化させる新小4の時点から、大きな方向性は決めていく必要があると思います。

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