【ネタバレあり】『二月の勝者』に見る過去問の取り組み方

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中学受験
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中学受験のリアルを描いた漫画『二月の勝者 ー絶対合格の教室ー』は、単行本でも小6の秋を迎え、いよいよ中学入試間近です。現実の世界も、まもなく2学期。受験校決定や過去問…。小6の秋をどう過ごせばいいのか?『二月の勝者』から、特に参考になる「過去問」について紐解きます。

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格段に情報量の多い、『二月の勝者』の小6秋

『二月の勝者-絶対合格の教室』は、高瀬志帆さんによる漫画で、現在『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載されています。

中学受験塾を舞台に、中学受験の実態をリアルに描いています。参考文献には、おおたとしまささんはじめ、中学受験界で活躍される方の著書が名を連ね、塾の裏側を含めて、かなり実態に即して描写されています。「中学受験ガイド」として十分に機能する漫画です。

2021年10月からは、主人公の塾講師を柳楽優弥さんが演じるドラマが日本テレビ系列で放送されます。

二月の勝者-絶対合格の教室-
日本テレビ2021年10月期土曜ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』公式サイト。「高瀬志帆」原作の中学受験の実態をリアルに描いた人気マンガが待望のドラマ化!激変する受験界に舞い降りた、最強で最悪のスーパー塾講師・黒木蔵人(くろきくろうど)を「柳楽優弥」が演じます!

また、単行本は2021年8月に12巻が発売され、中学受験直前の秋まで物語が進んでいます。
12巻のうち第6巻以降は小6の秋が描かれていて、夏以前に比べて格段に情報量が多くなっています。
過去問や受験校決定、さらには家庭内・親子間の衝突など、目を逸したくなる、しかし決して皆無とは言い切れないシビアな現実も如実に描かれています。
主人公の黒木蔵人は、SAPIXをモチーフにした名門中学受験塾から中堅塾に移籍してきたエース級の算数講師。
その言葉は、この漫画の取材力の深さゆえに、実の中学受験でも大いに参考になります。

過去問の解き方

「過去問」のためだけでも読む価値あり

『二月の勝者』に描かれた小6秋にまつわるエピソードでもっとも役に立つのが過去問についてです。
中学受験では、夏休みに、いわゆる「電話帳」などの類で大量の入試問題に臨みますが、秋からはいよいよ受験校の入試問題に臨みます。
単行本の第9巻は、過去問について学ぶためだけでも一読の価値があります。

このうち、第80講では、黒木が保護者会で、過去問の取り組み方について説明します。

大きなポイントは、

・過去問を何回もやったほうがいいのか?
・いつから過去問に取り組むか?
・親は過去問を解く必要があるのか?
この3つです。

過去問を何回もやったほうがいいのか?

過去問について、繰り返し解くことが大切なのか?ということを疑問に持たれる方は多くいらっしゃいます。
実際、私が募集している質問箱でも過去問についてご質問をいただくことがあります。

Motoサピックス講師の質問箱です
質問・回答はこちら

特に疑問を持たれるのが「何回もやったほうがいいのか?」という点です。
この点、黒木は、保護者会で次のように説明しています。

(同じ過去問をできるまで何回もやったほうがいい、っていう話も聞きますが。)そうですね
問題形式になれるという意味で、それもひとつの方法ですが、実はそのやり方には弱点があります。子どもによっては問題を覚えてしまうことがあるんです。子どもは意外と器用です。特に上位校を受けるレベルの生徒は

「上位校を受けるレベルの生徒は」と言っていますが、これは「そのレベルの生徒の実力的に」、という意味でもあります。さらには御三家をはじめとする上位校は、問題に特徴があるため、一度解法や答えを知ってしまえば、記憶に残りやすいということもあります。
たしかに、過去問に限らず、同じ問題を何回も解いて、解けるようになることはたしかに基本的な学習姿勢として非常に重要です。
しかし、それは受験勉強の過程において、繰り返し解く価値がある問題を体に染みつけることで、類似のほかの問題も解けるようにすることが目的です。
塾のテキストに掲載されている問題は、塾として「類似の問題が出題される可能性がある」などと判断して掲載されていますが、学校の入試問題については、そのような観点で作られているわけではありません。もちろん繰り返し解く価値のある良問もありますが、すべての問題がそうではありません
また、『二月の勝者』に出てくる「開成中学校の算数25年」。声の教育社から発売されていた、算数のみ25年分掲載した過去問集で、作中の島津パパのように、こうしたものを利用しようという方もいらっしゃいますが、その学校の過去問を大量に解けばよいというわけではありません入試問題は、決して傾向をつかめば解けるようになるわけではなく、あくまで学力・実力は過去問以外の塾のテキストなどから総合的に身につけるべきものです。実際、開成も出題者が変われば出題傾向にも変化が生じます。また、よく言われるように、同じ問題は二度出題されることは、原則としてありません(ないとは言いません)。

第1志望校は10年分、第2志望校は5年分、それ以外は1〜3年分などの目安はありますが、
過去問を解く際は、

・傾向を学ぶのか
・形式になれるのか
・どの程度得点できるかといった合格可能性を測定するのか

過去問と塾のテキストの大きな違いは、過去問は、家庭ごとに取り組む学校も異なり、塾任せという考え方ができないことです。
もちろん択一的なものではありませんが、過去問を解く意味と解いたあとの復習のあり方について、まず親が考え方を整理し、子どもと意思の統一を図っておくのが大事です。

いつから過去問に取り組むか?

そして、過去問をいつから解き始めるのか、というのも、黒木はこう説明しています。

もちろん早めに取り組んで傾向を掴むことは大事です。しかし、それも志望校の問題に特徴がある場合。中堅校ではクセのない一般的な問題を出すことが多いので、弱点をしっかり固めた11月以降の着手でも遅くはありません。自分の実力と志望校がどれくらい離れているのか、その距離や足りない穴を見つけることは、初見の過去問を解いてみなければわからないことです。

志望校の入試問題の特徴といっても、単に記述式か記号式か、問題量は多いのか少ないのかといった特徴から、「この学校ならではの視点」での出題まで、入試問題に現れる個性はさまざまです。
ここで、あくまで「志望校の問題に特徴がある場合」「中堅校ではクセのない一般的な問題を出すことが多い」と述べているとおり、やみくもに過去問一辺倒になる必要はまったくありません
むしろ、過去問は、4科目分1日で解こうとすると、それなりの時間の調整が必要になってきます。
入試問題を解いている間、「傾向を掴む」「時間間隔を磨く」などのメリットはあるにせよ、試験形式の演習というのは、テキストの演習に比べて、ともすると非効率的になりがちです。
「自分の実力と志望校がどれくらい離れているのか」知るために、過去問に速く取り掛かりたい気持ちはわかりますが、そもそも入試の1月・2月まで、学力は伸び続けます
大人の時間軸で、9月から2月までの残り5ヶ月間は、あっという間かもしれませんが、まだ11・12歳の小学生にとっては、とても長い時間です。
小学校生活の7%にあたり、小4から受験勉強を開始したなら、受験勉強期間の13%。追い込みの時期であることは間違いありませんが、最後まで学力は伸びていきます。あまり早い時期から合格できるか測定したり、限界を感じたりする必要はまったくないのです。

本郷中学・高等学校 入試広報部のツイッター・アカウントがとてもいいことをツイートしていました。

「本番までまだまだ伸びしろはたくさんあります!」まさにそのとおりです。
(このアカウントの発言すべてに頷くわけではないのですが、これはいいこと言っているなと思います!)
塾のカリキュラムも、子どもたちが苦手にしがちなポイントをおさえながら、最後まで学力が伸びるように組まれています。たしかに新規の単元の学習はこの時期には終了していて、「冠コース」が設けられるような難関校の対策など、学校別の対策も強化されますが、基本が押さえられていないなかで志望校対策だけをしても、むしろ学力は落ちていきます
入試までにどの学校を何年分解くのか、計画を立てておくこともとても重要なのですが、一方で、とにかく過去問、過去問と焦ることだけはないように注意が必要です。

親は過去問を解く必要があるのか?

最後に、子どもではなく、親はどのように過去問に接する必要があるのでしょうか?

親御さんには、できれば志望校の過去問に目を通しておいてほしい。それをお子さんに教える必要もありません。ただ知ってほしい。お子さんが目指しているその学校が、試験問題を通してどんなお子さんを欲しがっているのかを。真面目にコツコツ基礎を固めた子なのか。情緒豊かな子なのか、理論立てて考える思慮深い子なのか。常識のある子か、社会に興味のある子か。自己主張のできる子か、優しい子か。試験問題は学校からのラブレターです。その恋文の真意を受け取って、こたいらの熱い想いを答案に返せるように皆様が事前の予習をしておいてください。」(第80講)

ここではあまり触れられていませんが、過去問をコピーする、いつどの学校の過去問を解くか決めるといったマネジメントも親の大事な役割です。
ここで気をつけたいのは、子どもの意思を尊重することです。
受験生の9月になると、これまでまだ小さい、幼いと思っていた子どもも急に意識が高まってくることがあります。
過去問は、基本的にどの時期から解くのが正しいという正解はなく、塾の指示があればそのとおりにやればいいのですが、「過去問にチャレンジしていたい」と子どもから手を挙げてくるケースもあります。そうした場合に、子どもの成長を認めて後押ししてあげるのも大事です。
『二月の勝者』作中の島津くんも、島津パパに言われて解いた開成の過去問を解けたことが、喜びとなり、勉強の原動力となっています。実際、有名校の入試問題は、単発で解く機会はそれまでもあったはずですが、優秀な子どもでさえ身構えてしまう。それが「過去問」です。

過去問は、受験という過程において、受験生と志望校がもっとも接近する場です。
取り組む以上、合格点に達しているか、達するためには何が足りないのかといった分析が大事なのは言うまでもありません。
しかし、過去問を、子どもが受験生として最後に急成長するための道具として最大限活用してください。

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