中学受験は過熱?いまは中学受験ブームか 『二月の勝者』の世界も…

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中学受験
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「中学受験が過熱している」「第3次中学受験ブーム」などと言われます。
「結果偏差値が予想偏差値より高かった。ことしの入試は難しかった」など、中学受験の激化や難化は、定番のトピックです。
しかし、本当に中学受験は過熱しているのでしょうか?無用に不安に陥るのではなく、「正しく恐れる」ことが大事です。

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「虚像ともいえる第3次中学受験ブーム」?

よく、いまは「第3次中学受験ブーム」だと言われます。
森上教育研究所などによれば、第1次中学受験ブームは、1986年ごろから1991年ごろそして、第2次中学受験ブームは、1999年から2008年頃というのが大方の認識です。

第1次中学受験ブーム(1986年ごろ〜1991年ごろ)

ときは、バブル景気に湧いていたころです。
TAP経営者との対立で、SAPIXが設立されたのは1989年

四谷大塚の「準拠塾」制度が始まったのもこの頃です。
当時は、開成中学といえば桐杏学園、また武蔵中学といえば学習指導会など、いまと違う塾の勢力図がありました。
この受験ブームも、バブルの崩壊とともに終焉したとされます。

第2次中学受験ブーム(1999年〜2008年ごろ)

そして、第2次中学受験ブームは、ITバブルの頃、リーマン・ショックとともに終焉を迎えたとされます。
ときは「ゆとり教育」がスタートしたころ。「就職氷河期」が続いた時期でもあります。

現在は第3次中学受験ブーム???

そして、現在真っ只中と言われる「第3次中学受験ブーム」
実態はどうなのでしょうか?
中学受験者数に関する公的な資料はありませんが、受験業界に精通している森上教育研究所の資料が詳しく現状を表現しています。

入試状況はどう変化したかー受験者数27年間の推移  2021.3.5確定値

ほぼすべての受験生が入試に挑む2月1日の受験状況の推移を見ると、たしかにここ数年、中学受験比率は上昇を続けています
一方、少子化にも関わらず新設校の増加などにより、募集定員も増加傾向です。受験者数自体は、2015年から増加傾向が続いていますが、1.15倍。
そのため、2001年の1都3県の中学受験比率は、14.2%。1995年以降でもっとも低かった1999年の11.5%と比べても+2.7%の増加に過ぎないのです。「激化」というほどではありません

この点、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、こう述べています。

過去20年前まで遡れば、リーマン・ショックの影響で落ち込んでいた受験者数が2007年のレベルまで回復しただけ、ということがすぐにわかります。『中学受験が過熱している』というストーリーは捏造に近い印象です。

おおたとしまさ氏は1973年生まれ、麻布中学・高校を経て東京外語大中退、上智大外国語学部英語学科卒。中高の教員免許を取得しており、リクルートを経て、現在は教育ジャーナリストとして活動しています。
おおたとしまさオフィシャルブログ
おおたとしまさ ツイッター

おおた氏は、「中学受験の受験者数は景気動向と密接に関わっている」とも話しています。

1990年代に比べると中学側の募集定員が増えている現代は、多くの受験生に門戸が開かれている。ブームのような一過性のものではなく、“進路の選択肢のひとつ”として中学受験が定着した可能性も考えられる。その実情を知らない人々が受験者数だけを見て、第3次中学受験ブームをつくり上げているのかもしれない。

『二月の勝者』の世界、難関校は熾烈な戦い

過熱した中学受験ブームは、漫画『二月の勝者』でも描かれています。
2021年10月から、ドラマの放送が決定しました。

高瀬志帆氏原作の人気漫画で、中学受験の実態をリアルに描いたと話題です。ドラマでは、柳楽優弥さんが主役の塾講師を演じます

SAPIXをモチーフにした塾から移籍した塾講師を主人公にするこの漫画は、中学受験の闇とも言うべき、熾烈な世界が忖度なく描かれています。

先のおおた氏の記事でも、次のように述べられています。

“何が何でも最難関校”という考えは根強く、狭き門の難関校に受験生が殺到するクレイジーな状況が続いています。しかし、それはごく一部。中学受験シーン全体で熾烈な競争が行われているわけではありません

結果偏差値が予想偏差値より上がった?

一方、「偏差値」をめぐっても、たびたび変な噂が飛び交います。

塾が公表する偏差値には、予想偏差値と結果偏差値があります。
模試を受験した際に示されるのが予想偏差値、一方毎年入試後には、結果偏差値が発表されます。
2021年の結果偏差値は、四谷大塚も日能研も「結果偏差値が上がった」などと一部界隈で話題にもなりましたが、さきの森上教育研究所の資料から見ても、募集定員と受験者数に大きな変動がないなか、中学受験全体の難易度が上がったということはありません結果偏差値が上がったのは、あくまで塾・模試側が「予想を見誤った」にすぎないわけです。

特に中堅校では、「倍率が高かった翌年は倍率が低くなり、低かった翌年は高くなる」。倍率に敏感なので、安全路線を選ぶ傾向にあります。志望校の2年ごとの倍率の変動を確認することのほうがよほど大切です。また、特に大学合格実績に大きな変化が見られた学校などでは、急激に難易度が変化することもあるので、塾の説明会やネット上などで、最新の受験情勢に精通しておくことは大事です。

都心の人口増加地域などで塾競争が激化

「『中学受験が過熱している』というストーリーは捏造に近い」のはおおた氏の指摘するとおりですが、地域によって受験熱が高まっているのは事実です。

その顕著な例が、東京の湾岸エリアです。
2021年夏には早稲田アカデミーが豊洲校と品川校を同時に開校することになりました。

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たとえば、港区の場合、3割を超える中学受験比率となりますが、湾岸エリアでは多い学校で半数以上が中学受験に臨みます。

塾の競争も激しく、早稲田アカデミーの新校舎はいずれもNN開成クラスの担当を校長にあてる力の入れようです。
また、SAPIXでは、湾岸エリアにはすでに豊洲校がありますが、あえて大規模校の東京校に通う生徒もいます(2021年の合格実績がのびたことなら、豊洲の人気も高まるとも予想されます)。
中学受験の動向と直接には結びつきませんが、東京五輪後にHARUMI FLAGができることなどから、湾岸エリアの人口はますます増えることになり、教育熱心な、また子育て世帯が多く移り住むことから、今後も中学受験熱を牽引する地域になりそうです。

23区の小学生の人口は増加傾向なので、今後も厳しい受験環境は続く

では、今後の中学受験の動向はどうなるのでしょうか。
おおた氏は、「中学受験の受験者数は景気動向と密接に関わっている」と指摘しています。今後景気が減速することになれば、中学受験にも影響が出てくる可能性はあります。
一方、小学生の数は、少子化で全国的には減少傾向ですが、東京23区にいたっては低学年ほど児童数が多い状態です。

つまり、現在と同じ中学受験率が続くのであれば、受験者数の実数は多くなるので、基本的には今後も厳しい受験環境は続くものとして、そもそも多少受験者数が減ったところで、大きな難易度の変化は生じませんので、余計な情報に惑わされずに勉強に力を入れることが大切です。

中学受験は、正しく恐れる

新型コロナをめぐって、「正しく恐れる」という言葉が使われますが、これは中学受験でも同様です。
もちろん、倍率の動向などに注意をはらい、「必ず合格する」ことは大事です。
一方で、多少の倍率が変化したところで、小学生が取り組むべき受験勉強の内容が変わるわけではありませんし、1年後、2年後の倍率の動向など、塾でも正確に読み取れるものではありません。
とかくメディアは、「煽る」情報が拡散しやすいですが、冷静に、我が子と向き合い、子どもにあった受験環境を整えることが肝要です。

ツイッターなどでも情報発信しています。

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