「情報I」追加決定 大学入学共通テスト 中学受験生は有利? 新たな大学入試対策

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情報
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2025年の大学入学共通テストから、国立大学の受験は、現在の5教科7科目から、教科「情報」を加えた6教科8科目になることが決定しました。中でも大きいのが「情報I」の追加です。算数的思考力のあり、中高一貫のメリットを生かせる中学受験経験者にとっては難なく高得点が狙える可能性が高い反面、多くの大学受験生にとっては大きな負担にあることも心配されます。

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「地理総合」や「情報I」… 大学入試改革の骨格

2021年に開始した「大学入試共通テスト」。2年目の2022年は、数学IAの平均点が、センター試験時代を含めて過去最低となるなど、そのあり方が大きく注目されています。
そうしたなかで、2022年度から実施される高校の新学習指導要領に合わせ、2025年の大学入学共通テストから大きく変わるのが、「地理歴史」「公民」、それに「情報」の追加です。
2022年1月28日の国立大学協会入試委員会の総会で、国立大学の一般選抜の受験生には原則として、従来の5教科7科目に教科「情報」(科目は情報Ⅰ)を加えた6教科8科目が課されることが決定しました。

これまでも共通テストには「情報関係基礎」という科目はありましたが、数学と同時間に行われ、受験者数は少なかったのですが、2025年以降、国立大学の志望者は全員「情報I」を受験する必要が出てきます。
2021年度の中学3年生、2022年度の高校1年生が高校3年生で臨む共通テストでは、教科としての「情報」、科目では「情報Ⅰ」が共通テストで初めて出題されることになります。
「地理歴史」「公民」の再編の影響もそれなりにありますが、特に大きな変更点である「情報I 」の追加の意味と、中高生に与える影響について見ていきます。

  • これからの高校生はプログラミング、とりわけ「Pythonパイソン」のスキルが不可欠に!
  • 中学受験経験者は、中学からプログラミングに触れることで、早めの対策を!
  • 問題は簡単なので、大学入試直前期の負担にならないような「戦略」が重要!

「情報I」とは? 2022年からは高校でのプログラミング教育が必修に

高校生全員が学校で「情報I」を学ぶことになる

共通テストで導入される「情報Ⅰ」という科目は、2022年度に思考される、新しい学習指導要領で設けられるものです。これまで教科である「情報」には、「社会と情報」「情報の科学」という科目が設けられていたのが再編され、「情報I」が新たに設けられます。なお、2023年度からは選択科目である「情報II」もできます。
この「情報I」は、共通必履修科目となります。つまり、私立も国公立も、全国の高校生が全員同じ科目を学ぶことになります。
ちなみに、高校生全員が履修する共通必履修科目は、ほかに国語の「現代の国語 」「言語文化」、地理歴史・公民の「地理総合」「歴史総合」「公共」、数学の「数学Ⅰ」、外国語の「英語コミュニケーションI 」、「体育」「保健」「総合的な探究の時間」です。

開成は「社会と情報」、桜蔭は「情報と科学」だったのが…

現時点でも多くの私立中高一貫校では、「情報」の授業は、高校1年時に週2時間程度必修となっています。
たとえば、開成高校では高校1年時に「社会と情報」もしくは「情報の科学」いずれかを選択制で週2時間、桜蔭高校も「情報と科学」を週2時間学んでいます
このうち、「情報」という科目名から多くの人が連想するプログラミングが含まれるのは「情報と科学」ですが、実際、全国の普通科高校うち「情報と科学」を生徒全員が学ぶ高校はごくわずかでした。
その他の男女御三家中高一貫校で見ても、麻布からや雙葉は「社会と情報」ですし、いわゆる難関校の生徒たちの多くは、プログラミングというよりは、「情報の活用や情報社会の課題と情報モラル」などを学ぶことに主眼を置いていました。英語や数学などの主要科目とは一線を画す、どちらかというと公民や家庭科、技術科などに近い存在でした。
新しい「情報I 」は、「社会と情報」「情報の科学」の両方の内容を含む形になる、つまりプログラミングが必修になるのですが、大学入学共通テストでの受験が必須になることで、より「受験対策」を意識した学習が必要になります。そういう意味で、センター試験時代を含むここ数十年で最も大きな変化の一つとも言えるのです。

共通テストの「情報I」は、中学受験生に有利 〜 算数的思考力が生かされる

中学受験生でも情報の問題は解ける 早めのイメージが大事

男子御三家の1つ、武蔵高校は、学校案内で「情報」の授業内容について次のように記しています。

デジタル、アナログの概念やネットワーク技術、暗号技術など情報化社会の仕組みについては、数学的なアプローチのもと、学んでいきます。(武蔵高校ウェブサイトより)

こう表現を使っているように、「情報」という教科、とりわけプログラミングの分野に関しては、「数学的アプローチ」が重要になってきます。さらに言えば、中学受験経験者は、「算数的思考」の応用で、十分対応可能な内容になっています。
むしろ、中学受験の段階で学んだことをプログラミング化するといった能力が試されてもいるとも言えるのです(具体的には「ドント式」のプログラミング化などだ共通テストのサンプル問題に出題されていますので、あとで詳しく説明します)。

こちらのリンクは、2021年3月に文部科学省が発表した、大学入学共通テストの「情報Ⅰ」のサンプル問題です。

大学入試センターは、このほか、新たな科目である「地理総合」「歴史総合」「公共」のサンプル問題も合わせて公表していますので、興味がある方は御覧ください。

そして、今回の大学入学共通テストのサンプル問題では、「情報I 」の以下の4つのテーマからまんべんなく出題されています。

情報社会の問題解決
コミュニケーションと情報デザイン
コンピュータとプログラミング
情報通信ネットワークとデータの活用

「情報デザイン」なんて初めて聞いたという方もいらっしゃるかと思いますが、難しいことではありません。
たとえば、こちらの問題。

「クラス全員」を「電車を利用 する」「バスを利用する」「自転車を利用する」 に分類するというのは、中学受験生でもおなじみの「ベン図」を使って表現します。答えは1
「Plan」「Do」「Check」「Action」、これはビジネスパーソンならおなじみですね。答えは5です。

文部科学省は、 「情報I」ではメディアの特性やコミュ ニケーション手段について理解し,情報デザインの考え方や方法を理解し表現する技能を身に付ける 」といった小難しい言い方をしていますが、要は、ある情報を伝えるときに適した「デザイン」の表現方法を身につける。
まさに「情報」伝達の基礎となる部分で、ビジネスでも学術でも必須となるものですが、あくまで「情報」という科目のなかで整理して教えるということであって、決して何か真新しいことを学ばなければいけないということではありません

中学受験生が社会で習うドント式 プログラミングは言語を概念化する能力が問われる

プログラミングの問題も、決して難しくはありません。
共通テストで扱う言語について、次のように記されています。

問題の中で使用するプログラム言語は,高等学校の授業で多様なプログラム言語が利用される可能性があることから,公平性を鑑みて,大学入試 センター独自の日本語表記の疑似言語としている
(サンプル問題『情報』ねらいより)

実際は、Python( パイソン)という言語に非常に近い表現がなされていますが、2022年から使われる「情報I」の12の検定教科書は、基本的にPythonを扱うことになっています。
多くの学校の授業ではPythonをもとに学習することになりますので、その意味で、これからの高校生にとって、Pythonは英語と並んで必須の言語ということになりそうです。

そのうえで、共通テストのサンプル問題を見てみますと、次のような題材が扱われています。

中学受験生にとってはおなじみの、比例代表における各党の議席配分を決定する「ドント式」です。
各党の議席を1で割って、2で割って…と繰り返し、数が多いものから定数分の議席が獲得議席になるというものです。

それをコンピュータで処理するためには、どういうプログラミングをすればいいのか、教師と生徒の会話を通じて考え、プログラミングを修正しながら完成させていくというものです。
プログラミングというと難しく感じるのですが、実際やっていることは、小学生がドント式で議席を求めるのと全く同じこと。頭の中でやっている作業をコンピュータ言語化させるだけなので、何も特別なことではありません。

ちなみに、これをPython で書いてみると、次のようになります。

Tomei = ["A党", "B党", "C党", "D党"]
Tokuhyo = [1200, 660, 1440, 180]
Koho = [5, 4, 2, 3]
Tosen = [0, 0, 0, 0]
Hikaku = [0, 0, 0, 0] 
tosenkei = 0
giseki = 6
for m in range(4):
    Hikaku[m] = Tokuhyo[m] 
while tosenkei < giseki:
    max = 0
    for i in range(4):
        if max < Hikaku[i]:
            if Koho[i] >= Tosen[i]+1:
                max = Hikaku[i]
                maxi = i
    Tosen[maxi] = Tosen[maxi] + 1
    tosenkei = tosenkei + 1
    Hikaku[maxi] = Tokuhyo[maxi] // (Tosen[maxi]+1)
for k in range(4):
    print(Tomei[k],":",Tosen[k],"名") 

わずか21行のコードで、たしかに初心者にとって難しいかもしれませんが、Pythonはこれから全国の高校生が学校の授業で学ぶわけです。
そして、サンプル問題では、他の科目でもあるような先生と生徒の会話を通じてコードを考え、修正していくという過程がとられています。会話をコード化する作業力が求められていて、まったくゼロからコードを書く力は求められていません
私も簡単なプログラミング、またエクセルのマクロを多少つかいこなせる程度ですが、このコードは、基本中の基本といった感覚です。数学の基本問題と同程度のレベルでしょうか。英語で言えば中1、中2の教科書レベルと言ったイメージです。
プログラミング言語そのものへの対応力もありますが、大事なのは、物事を体系立てて考える力、それは中学受験の算数でも十分に培われる力です。

数学の基本問題も出題される「情報I」

また、情報Iでは、「統計」も学習することになりますが、サンプル問題で出題された統計分野の問題は、数学でも習うもの、その一部は中学数学でも扱われるものです。
下の問題は、中学2年、私立中学なら中学1年で習い、誰でも解けるような問題です。

情報という全く新しい科目が共通テストでプラスされるわけですが、1科目分まるまる真新しいものを学ばなければいけないわけではありません。
数学、社会などを「情報」というくくりで融合、分類し直して出題されるという認識でかまいません。

さらには中学受験生でも解ける 共通テストの「情報」、早めの対策がのちに功を奏す

どのテストでもそうですが、早い段階で「ゴール」を認識し、それに向けて体系立てて勉強することは非常に大事です。特に、「情報I」という科目の対策は、予備校講師であろうと、受験生であろうと、未知のものへの対応という意味でほとんど違いはありません
その意味で、もっとも重要なのは、適切な情報収集(まさに情報が大事!)と、ゴールを見据えた対策です。
この点、「情報I」は多くの学校では高校1年で学習することになりますが、少しでも早く少しずつ勉強をすすめることで、受験期の負担を減らすことが可能です。
いくら新しい科目が加わったとはいえ、サンプル問題を見る限り、国立大を目指す上位レベルで、しっかり対策をした生徒ならば大きく差がつくようなものではありません。あえて、サンプル問題の難しいところを挙げると、試験時間は60分の予定で、それなりのスピード力を身につかなければ、他の問題を含め、解ききることは困難です。

さらに、受験が近づくにつれて、やはり英語や数学などの主要科目、それに暗記科目の地理歴史や公民などの勉強の負担も増えていきます。
そうしたなか、少なくとも高校2年以降は情報の勉強はほとんどしなくても共通レストに対応できるだけの学力を身に着けておくことが不可欠です。
今後、予備校などでも対策はとられると思いますが、それを待つことなく、早めにサンプル問題を解いて、それに対応できるだけの学力を身に着けることが大事です。塾・予備校側にとっては新たな科目で受講料を獲得するチャンスになるのですが、未知のもの、そしてそれほど難しいものではないからこそ、塾・予備校に頼らないことが大事になります。

一方、「情報I」を学校の授業で学ぶだけではプログラミングを理解できないという生徒が出てくることも懸念されます。さきほど、共通テストに出題されるのは基本問題だという話をしましたが、とはいっても、英語や数学に得意不得意があるように、プログラミングも苦手ということになります。
おすすめするのは、中学のうちから「Python」をはじめプログラミングに慣れ親しんでおくことです。遊び感覚、ゲーム感覚で挑戦してみてもよいですし、最近ではプログラミングを学べるクラブ活動もあります。

また、共通テストで出題されるレベルの基本でしたら、「Progate」のようなサイトで無料ないしは定額で学習することが可能です。

このサイトで数時間Pythonの学習をして、共通テストのサンプル問題を解きながら実践演習をしていけば、頭が柔らかい中高生は、あっという間に共通テストレベルのプログラミング能力は身につくはずです。また、興味があれば、プログラミングをしてなにか作ってみるといったことでも実力は簡単に伸びます。
プログラミングは、多くの大人にとっては馴染みがないものですが、特にPythonのコードを理解できるのは、外資系企業への就職をはじめ、多くの場面で重要になってきます。

とにかく、プログラミングは自分でパソコンをいじって実際にコードを書いてみることが大事です。紙面で勉強しても正直たいくつなだけで「情報」が嫌いになってしまいます。「情報」は実学ですから、どんどん自分でプログラミングを経験してみましょう。

そして、繰り返しになりますが、情報で得点するために必要なのは、物事を体系立てて考える力、中学受験の算数の応用です。
小学校での「プログラミング」は、プログラミング言語を扱うわけではありませんが、その体系的に物事を組み立てる力を重視します。そして、そうした力は中学受験の算数を通して磨かれていきます。

中学に入ると英語や数学などの勉強も大切になりますし、大学受験を見据えると、理系の化学・物理などの負担は決して小さくありません。
そうしたなか、算数・数学的思考力を身に着けた中学受験経験者が、高校受験のないメリットを活かし、余裕のある中学生の間に「Python」などのプログラミングを共通テストレベルまで身につけ、さらに高校での授業で、最低限必要な知識を身につければ、まさに鬼に金棒になります。
「情報I 」が必修になることの是非はさておき、大学入学共通テストでの受験がマストになったという事実を受けて、これをいかに武器にするか、長期的な戦略で臨むことが重要になります。

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