2021中学入試 SAPIXコアプラスv.s. 開成中学! 受験生必携の書で社会は何点とれる?

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中学受験
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開成中学は言わずと知れた男子の最高峰。合格実績No.1を誇るのが、SAPIX小学部です。
そのサピックスは、膨大なオリジナルのテキストが特徴ですが、理科・社会の一問一答式問題集『コアプラス』は市販され、多くの受験生必携の書になっています。

入試直前まで基礎力の確認に使用され、入試会場に持ち込む受験生も多い『コアプラス』。
それだけを勉強したら、開成中学では、一体何点取れるのでしょうか?合格点突破は可能なのでしょうか?
最新の2021年の開成中学社会の入試問題で検証します。

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『コアプラス』とは

『社会コアプラス』は、その冒頭、次のように記されています。

この「社会コアプラス」は中学入試・社会で出題される重要事項から、「核」となる知識を厳選し、まとめた問題集です。本書を用いれば、入試問題を解くために必要不可欠な知識を、効率良く身につけることができます。

つまり知識の「核」=「コア」を身につけるための問題集です。
地理・歴史・公民・国際社会などすべての分野にわたって700問以上の問題が収められ、さらに小問に分割されていますから、数千の「コア」の知識を知識をまんべんなく抑えることができます。
いわゆる「一問一答」式ですので、基礎知識の確認に利用しやすく、サピックス小学部の小テストにも利用されており、男女御三家の受験生の間でも、人気の1冊です。

難関校の入試問題は『コアプラス』で対応できるのかしら?

サピックスには、開成や桜蔭をはじめ、男女ともにトップレベルの私立中学を目指す生徒が集結しています。

教材もそうした難関校の受験のために作られていますから、難関校の受験生にも十分役立つ参考書ですよ!

2021年開成中学 社会入試問題 v.s. コアプラス社会

でも、御三家の問題は知識だけでは対応できないとも言うし…

ですよね。

2021年2月1日に行われた開成中学の社会の入試問題は、『コアプラス』で対応できるのか、検証していきましょう!

開成中学の入試問題は、インターエデュなどに掲載されていますので、問題をご覧になりたい方は、ご自身でダウンロードしてみてください。
※問題をご覧にならなくても、内容はご理解いただけます。

開成中学校の入試問題(過去問)と解答 | インターエデュ
開成中学校の入試問題(過去問)と解答を掲載しています。

大問1  歴史問題

奈良・鎌倉・江戸時代の「東海道」について述べた文章を読み、資料を読み解いたり、基礎知識を確認する問題です。

受験生が自信をもって最後まで解ききるうえでもっとも大切な1問目は、木簡に関する問題です。

入試問題に出題された木簡(奈良文化財研究所)

「木簡」自体はコアプラスにも写真付きで載っていますから、「あ!木簡の問題だ」と思えれば、しめたものです。
ただ、いきなり最初の問題は、その木簡について「地方から都に租税を納めたときに荷札として用いられた」という説明文のもと、原文の( )を埋める問題です。

伊豆国田方郡棄妾郷瀬埼里戸主茜部真弓〔  〕荒堅魚十一斤十両 六連一丸
天平七年十月 *西暦の735年にあたる

さて、漢字ばかりの木簡の原文
いきなり混乱してしまう受験生も多いのではないでしょうか。
ただ問題自体は、「租税の名称」を漢字で答える問題です。
漢字ばかりで小学生にとってはとっつきにくくはありますが、「堅魚」には「かつお」というルビも振ってあり、「特産品を収めているんだ!」と気付ければ解答可能です。

答えは「調」です。

さて、コアプラスに載っているのかというと、しっかり載っています。

(①)…収穫した稲の%を納める税。
(②)…都で10日間働く代わりに布で納める税
(③)…その地方の特産物を納める税

という形で、「租庸調」を記述させる問題が掲載されていますから、どうやらコアプラスで開成も対応できそうな予感ですね。

第1問は、コアプラスで解けます!

でした。

でも、漢字ばかりの木簡を読ませる時点で難しいでしょ?

そうなんです。

開成の入試問題は、一問一答式の問題集で知識を身に着けたら解けるというほど甘くはありません

普段から、史料に触れたり、思考力を問う入試問題に触れていないと、とても対応できません。

 

ここでは、すべての問題を見ていくわけではありませんが、もう1問分析してみましょう。

※実際の入試問題はご自身でご覧ください。ここでは、問題の要旨を抜粋して掲載しています。

2問目は、資料から読み取れることを述べた文として誤っているものを1つ選ばせる問題です。

ア 木簡は東海道を使って運ばれた。
イ 当時の都は平城京だった。
ウ 戸主がとりまとめて納入した。
エ 土地の広さを基準に課税された。

この問題は、完全なる資料の読み取り問題です。

いきなり

2問目にしてコアプラスでは解けません!!

結果に。

ただ、そもそもこの大問は「東海道」に関する設問で、「伊豆」が静岡、東海道沿いであることは、コアプラス巻頭の「昔の日本の国名」を覚えていたらわかりますし、この木簡は735年、つまり710年から794年の間であることがわかれば、多くの受験生は解けるでしょう。木簡に「戸主茜部真弓」とあることから、ウも正しいと推測でき、消去法で選択することが可能です。

実は、次の問題にもあるように、開成中学の入試問題は、年代の並び替えを問う問題が必ず出題されます。

a 源頼朝が守護と地頭を任命する権利を認められた
b 源頼朝が奥州藤原氏を滅ぼした
c 源頼朝が征夷大将軍に任じられた。

こうした並び替え問題は、もちろん「歴史の流れ」を理解することも大切なのですが、ある程度のレベルでは正確な年代の記憶が求められます
年代問題については、サピックスから『年表トレーニング帳』という別の参考書が出版されており、コアプラスではあまり問われません。つまり、

歴史問題はコアプラスだけではなく、『年表トレーニング帳』の学習も不可欠

と言えます。
「用語」の知識を固めるためのコアプラス、時代の流れを把握する『年表トレーニング』と、それぞれの参考書の役割をしっかり把握して、目的に応じた使い方をすることが肝要なのです。

大問1を分析してみると、10問中5問はコアプラスで解けるという結論です。
ただし、漢字だらけの資料の読み取りができることが大前提での「解ける」との判断であり、単にコアプラスで一問一答問題に答えられるだけで対応できる問題はほとんどありません!

大問2  歴史問題

続いても歴史問題です。

1889年から1945年までの東京市と大阪市の人口推移の表を見せたうえで、人口が変化した理由を経済の変化とリンクさせて問う問題です。

問1は、戦争の名称を答えさせる問題です。
先に結論を述べましょう。

コアプラスで解けます!

たとえば、「1989年から1918年までの期間をみると、大阪のほうが東京より、人口が急増している」という文から、

「明治時代後半から(  )が終わるまでの時期」

( )内に入る戦争名を漢字で答えさせる問題です。

1918年まで続いたのが「第一次世界大戦」であることは、難関校の受験生にとっては基礎知識と言えますよね。
ほかに、「満州事変」「日中戦争」を答えさせる問題もあり、3つの戦争名を答えさせるこの問題は、コアプラスに掲載された知識の中でも、基本中の基本と言えそうです。

一方、その後に続く経済の状況を問う問題はコアプラスの知識だけでは難しいのが実態です。

ア 工業の中心は繊維産業
イ 官営工場が工業生産の中心を占めた
ウ 軽工業中心から重化学工業中心へ
エ 重化学工業製品の輸出急増
オ 石炭から石油へのエネルギーの転換

こうした産業構造の変化は、テキストには掲載されており、多くの受験生は学習した記憶はあるはずです。
ただ、どの時代のものかは、一問一答で問う性質のものではありません。

コアプラスだけではなかなか対応できません!

さきほども述べましたように、歴史は、年代そのものの記憶を含め、「流れの理解」が非常に重要なんです。

コアプラスだけで対応しようと思うと危険なことが、だんだんおわかりいただけましたか?

大問3 公民問題

日本の内閣総理大臣やアメリカの大統領選挙などに関する会話文を読ませて、現代社会の知識を問う。時事問題の正確な記憶・記述も求めらます。

まず結論から申し上げると、

コアプラスでは、ほとんど対応できません!

穴埋め問題で出題されたのは、以下のような問題です。

  • 2020年9月に、日本の内閣総理大臣は誰から誰に交代したか
  • 2020年のアメリカ大統領選挙で勝利した人物
  • 2005年にドイツで始まった長期政権

大人にとっては常識ですが、完全な時事問題です。

  • 「安倍晋三」「菅義偉」は「フルネーム」での解答が求められています(ひらがなの場合の得点は不明です)。
  • 「バイデン」氏の大統領選勝利は11月のことです。
  • ドイツ首相「メルケル」は大人でも答えられない人がいるかもしれません。

時事問題については、サピックスから『2021年 中学入試用 重大ニュース』が発売されています。

しかし、アメリカ大統領選は、『重大ニュース』の発売直前。掲載されていません。

御三家など、難関校の受験生にとっては、当たり前に聞こえるかもしれませんが、「塾の勉強」だけで対応できないのが難関校の入試問題です。

「大人」としての社会的常識、ニュースへの関心が問われる問題ですね。

「いわゆる受験勉強ばかりしている生徒は求めない」という開成のメッセージが伝わってきますね。

公民の問題の小問16問中、コアプラスで対応できるのは、以下の2問だけでした。

(問)内閣総理大臣を指名する国会は?
ア 緊急集会 イ 常会(通常国会) ウ 特別会(特別国会) エ 臨時会(臨時国会)

(問)財務大臣の決定方法は?
ア 国民による直接選挙
イ 国会議員による直接選挙
ウ 財務省の官僚の長によって任命
エ 内閣総理大臣によって任命

いずれも、コアプラスで赤字になっている部分。すなわち記述での解答が求められる問題として掲載されている、いわば「コア」の中の「コア」にあたる知識です。
こうした問題を落としてしまうと、かなり痛い結果となってしまいます。

一方、経済の問題では、

1971年8月にドル・ショックが起きるまで、円とドルは( )相場制で、二つの通貨の交換比率は現在よりも( )だった。

の( )を選択肢から選ばせる問題などは、1ドル360円の固定相場制から円高に進んでいった歴史的経緯を理解しないと解けません
学習レベルで言うと、中学校の公民レベルの問題です。

サピックスでは学ぶようなことではありますが、コアプラスに載っているような「コアな知識」とは言えず、やはり、日頃から政治や経済について家庭での会話などを通じて、幅広く身につけていくことが不可欠です。

大問4 地理問題

災害や気候、環境破壊などの知識や資料の読解を求める問題です。

公民問題も独特ですが、地理もかなりクセがある問題です。
結論から言うと、こちらも、さきほどの公民同様、

コアプラスでは、ほとんど対応できません!

そうした中で、常識的に判断できる問題をいかに確実に解けるかが重要になってきます。
例えば…

気象庁が発表する情報について述べた文として誤っているものを、一つ選び、記号で答えなさい。

という問題。選択肢に挙げられたのは、

噴火警報 緊急地震速報 大雨特別警報 氾濫危険情報

それぞれ、どういうときに発令されるか問う問題は、ニュースによく出ることばの意味を問うものです。

気象に関する用語は、ここ数年、頻繁に変わっています。

出題では、

緊急地震速報は、1時間以内に最大震度が5弱以上の地震が発生すると予想される場合に、緊急地震速報を発表する

という、比較的間違いに気づきやすいものを選択させる問題なので、正答率自体は高いかと思いますが、「大人の常識」が問われるのです。

塾での勉強、コアプラスなどの参考書での勉強も大切ですが、それ以上に、日常的にニュースに接する「家庭環境」が重要で、過去の開成の入試問題から一貫して、そうした学校側の意図が伝わってきます。

さらに、地理の問題では、このほか「グリーンツーリズム」を記述させたり、「パーム油」を答えさせたり、王道の知識を問う問題は少なく、少しひねくれた印象も感じられました。

もともと、地理というのは、資料問題が多く、歴史や公民と比べても、いわゆる「一問一答」では対応しにくい分野です。
コアプラスは、知識の一部を身につけるためのものにすぎないという意識が必要だと思います。

では、コアプラスで何点とれるのか??

独自の集計によりますと、

57問中
コアプラスの知識で確実に解ける …14問
コアプラスの知識を利用して解ける …8問

です。

解答(記述は要旨)問われる知識コアプラス対応
1問1調租庸調
平城京・伊豆国
問2国分寺
問3守護地頭の設置、奥州藤原氏滅亡、頼朝征夷大将軍
問4六波羅探題
問5徳川家光・参勤交代
問6朝鮮通信使・琉球使節団
問7歌川(安藤)広重東海道五十三次
神奈川
2問11第一次世界大戦
2満州事変
3日中戦争
官営工場
軽工業・重化学工業
a紡績業
b官営工場
問2高速道路・伝統・ラジオ放送・市電バス
関東大震災
問③X徴兵
Y空襲
Z疎開
3問1A安倍晋三
B菅義偉
Cバイデン
Dメルケル
問2特別国会
国務大臣の任免
問3いざなぎ景気・大戦景気・特需景気・バブル景気
ニクソンショック
問4伊藤博文や安倍晋三などの出身地
韓国併合・大正政変・日露戦争の年代
問54アメリカ大統領の任期
2アメリカ大統領の連続在任期間
問6アメリカ大統領選と選挙人
問7ア・ウ大統領制と議院内閣制
問8解散と内閣不信任案
問9特定の選挙区で得票率が高い小選挙区制と議席数
4問1
問2A海底の地形(東北)
C海底の地形(奄美諸島など)
問3夏の季節風の向き
問4緊急地震速報
問5地形図の読み方
問6日本海流
問7地熱発電
問8
問9グリーンツーリズム
問10外国人観光客の推移
問11日本の1戸あたり耕地面積
問12輸入自由化・ミニマムアクセス・小麦輸入先
問13砂糖の生産量
問14パーム
熱帯雨林の破壊
問15バイオマスエネルギー
問16旭川旭川の気候
網走網走の気候

◎はコアプラスで十分対応可能、○はコアプラスの知識を活用して対応も可能です。
(なお、解答は、この記事執筆のために作成したもので、正確性は検証過程です。特に記述問題はメモ程度にご認識ください)

整理しますと…

  • コアプラスの表面的な知識を身に着けただけなら、25%くらいは解ける
  • さらにコアプラスの知識を活用すれば、合計40%くらい解ける
  • 逆に、6割の問題はコアプラスの表面的な知識だけでは解けません!!!

ちなみに、開成中学の社会は70点満点。
この記事の執筆時点で、合格者平均点は出ていませんが、50点前後、つまり7割程度の得点は必要になりますが、

コアプラスを表面的に勉強するだけでは、30点程度しか得点できません。

つまり合格はほぼ不可能です。

という結論に達します。

『コアプラス』は難関校受験生に必携です

いかがでしょうか。

つまり、開成の入試問題の多くは、「コア」の知識を超えた応用問題です。
整理しますと、

  • 歴史問題は、年表の理解が大事
  • 地理は、資料の読み込みが大切で、一問一答だけでは対応できない
  • 公民は「大人の常識」を身につけることが大切 ニュースに親しむこと

つまり、コアプラスは難関校受験には対応していないってことね?

いや、むしろ、だからこそ、コアプラスが非常に大切だとも言えますよね。

ほとんどの問題が応用問題ということは、すなわち基本問題を落とすと、全く対応できないということです。
コアプラスは700問。小問数では数千にのぼりますから、これを身につけるだけでも大変です。
厳しいですが、それさえもできないと、難関校の入試問題には対応できないのが現実なのです。

ここでは、コアプラスの知識が表面的に問われているか否かという観点でお話をしましたが、受験生の皆さんは、塾のテキストやテストを通じて、さらに多くの知識を身に着け、さまざまな資料に触れているはずですよね。
さらに、サピックスの市販の教材に限っても、地理なら「白地図トレーニング帳」、歴史なら「年表トレーニング帳」、時事問題は「中学入試用 重大ニュース」などの問題に触れていますよね。
それぞれの教材を、目的意識を持って、着実に身に着けていけば、少なくとも社会という科目は得意科目になるはずです

社会は暗記科目だとなめてかかると痛い目にあう

1点付け加えると、

社会は暗記科目だと思っていると、後で痛い目にあいます。

あくまで算国理社、4科目のうちの1科目。勉強時間に占める時間も、通常は他の科目より少ないはずです。

4年生で地理、5年生で歴史はしっかりと見に付けて、6年生は公民と、応用問題への対応力を上げていく。少なくとも2年、理想は3年の準備期間で、毎週毎週、着実に力を上げていく、そうした姿勢が求められます。

子供は長いスパンで俯瞰的に状況を判断するのは困難です。一方で、中学受験のために身につけるべき知識・能力は莫大なものです。適切なタイミングで、適切に塾に通わせ、適切に教材を使わせるなど、大人の側がしっかり子供を支えてあげることが大切です。

きょうは以上です。
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なお、本記事でご紹介した教材は以下のとおりです。



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