開成よりも低い平均点。ただ、差がつきにくいテストこそ大切なのは、基本的問題を確実に得点する「丁寧な勉強」。
難しい入試問題ほど基本が勝負。「コアプラス」など一問一答の問題集は、「一問三答」化して、空きのない知識の完成を目指しましょう。
渋幕とは?
渋谷幕張の特徴は、なんといっても高い大学進学実績です。
- 2020年東京大学合格実績
1 | 開成 | 185人 |
2 | 筑波大学附属駒場 | 93人 |
3 | 桜蔭 | 85人 |
4 | 灘 | 79人 |
5 | 渋谷教育学園幕張 | 74人 |
6 | 麻布 | 68人 |
7 | 駒場東邦 | 63人 |
8 | 聖光学院 | 62人 |
9 | 海城 | 59人 |
10 | 栄光学園 | 57人 |
現役合格率も7位。さらに医学部合格実績も1桁順位でランクインするなど、幅広く高い合格実績を誇っています。
さらに、イェール大学やカリフォルニア大学バークレー校など、世界のトップレベルの大学への高い合格実績を誇っているのも特徴です。
「難しい」「対策しづらい」低い平均点
大学の進学実績を上げ、中学受験での人気を高めてきた渋谷幕張。
入試も「問題が難しい」「対策がしづらい」といった評判が多くあります。
こちらは、2021年入試(一次試験)の結果です。
一 次 入 試 | |||||
科 目 | 国語 | 算数 | 社会 | 理科 | 合計 |
時 間 | 50分 | 50分 | 45分 | 45分 | |
配 点 | 100 | 100 | 75 | 75 | 350 |
受験者最高点 | 87 | 92 | 59 | 69 | 265 |
受験者平均点 | 56.7 | 41.9 | 34.8 | 38.3 | 171.8 |
合格者平均点 | 64.3 | 52.1 | 39.6 | 46.7 | 202.6 |
合格者最低点 | 29 | 18 | 21 | 24 | 182 |
渋谷幕張の社会と理科は、75点満点と、配点は算数・国語に比べて低くなっています。
それにしても、受験者平均・合格者平均ともに低いのですが…
ここで注目したいのが、社会の受験者平均と合格者平均の点差です。
同じ75点満点の理科は8点の開きがあるのに対し、社会では5点差にとどまっています。
受験者最高点は59点、100点満点に換算すると78点と低いんです。
算数の最高点の92点と比較してみても、得点しにくいテストだったことがわかります。
実際、合格者平均・受験者平均を見ても、社会は、ここ数年で最も難易度が高い結果となりました。
社会(一次) | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
受験者最高点 | 61 | 63 | 69 | 61 | 59 |
受験者平均点 | 43.1 | 36.8 | 45.7 | 43.1 | 34.8 |
合格者平均点 | 47.4 | 42.5 | 51.2 | 47.4 | 39.6 |
合格者最低点 | 32 | 20 | 30 | 32 | 21 |
この点数は、受験者層が重なる開成中学の平均よりも低く、入試問題のレベルでいえば、開成より難しいと言えます。
独自の対策は必要なのか?癖のある問題に難易度の高い、渋谷幕張。
渋谷幕張の試験日程はこちら。
一次入試 1月22日
二次入試 2月2日
男女御三家など2月1日の第1志望校と合わせて受験される方が多くいます。
各塾の学校別対策では渋谷幕張コースも設けられていますが、開成や桜蔭など他の第1志望の難関校の対策をしながら、渋谷幕張を受験する方も多くいらっしゃいます。
開成や桜蔭など、ほかの学校の対策をメインに行いながら、
渋幕に向けた特別な対策なしに及第点を取ることは可能なのでしょうか?
最新の2021年の入試問題を分析していきます。
なお、入試問題はさまざまなサイトに掲載されていますが、おすすめは、四谷大塚の「中学入試過去問データベース」です。問題のダウンロード・解答の閲覧ができます。
入試問題を解く際は、こちらからダウンロードして使えば、入試の雰囲気を味わうこともできます。さらに気兼ねなく書き込みをしながら解くことが出来ますよ。
この記事では、特徴的な問題をピックアップして、傾向を解説していきます。ぜひ入試問題をご覧になってお読みください。もしくは記事を読んだあとに入試問題を見ていただいても結構です。もちろんこの記事だけ読んでいただいても、十分理解できるように説明しています。
奇問の公民 〜みんなが解ける基礎問題を落とさないことが大事!
1問目の時事問題については、別の記事で詳しく解説していますが、2020年の「東京都と鹿児島県のち字選挙では、ともに現職の候補が当選した」かどうかを問う時事問題など、かなり奇異をてらった問題でした。
自販機に関する知識を問う問題では…
X 缶やペットボトル入りの清涼飲料を販売する自販機の設置には地方自治体の許可が必要なので、自販機に営業許可証がはられています。
Y 飲料の自販機を設置する際には、自販機の脇に缶容器回収ボックスを付設することが、容器包装リサイクル法で義務付けられています。
XとYそれぞれ正しいか誤っているかを問うものです。
大人の常識ではいずれも誤りと、なんとなく推測できそうですが、小学生の常識ではなかなか判断がつかない問題が並びます。
難しい問題が多いのですが、
ことしの渋谷幕張の平均点や合格者最低点を見る限り、難しい問題は落としても全く問題はありません。
一方で…
つくばみらい市は児童・生徒にペットボトル入り冷水を無料で配布するために、会計年度の途中に予算を組みました。この予算はどのような手続きを経て成立したのですか。
という記述問題。
これは、地方予算の成立の仕組みを問うものです。
地方自治の仕組みは、6年生で学びます。
市長が提出した予算案を,市議会が出席議員の過半数の賛成で可決して成立しました。
正解です。
基本のようで、これはサピックスの「コアプラス」にも掲載されていないレベルの「応用問題」です。
ただ、渋谷幕張では「基本問題」の部類に入ってしまいます。
渋谷幕張対策としては、塾で習ったことを、応用・発展まで含めて確実に身につける、すなわち「空きのない」勉強をする能力が問われています。
気をつけたいのは、「奇異をてらった問題」対策をする必要はないということです。
塾の側も、特に渋谷幕張の対策コースなどでは、「予想問題」を考えますが、学校が作る問題と塾が作る予想問題とでは、質が異なり、たまたま「当たる」ことがあるかもしれませんが、そこに力を注ぐのは、時間のムダづかいです。
それよりも、受験生みんなが確実に得点できる問題を落とさない、基本を大事にした勉強のほうがよっぽど大切なのです。
確実に得点したい歴史
基本的な知識を問う問題が比較的多く、確実に得点したいのが、歴史問題です。
とは言っても、単に歴史用語を暗記するだけでは解けないのが、渋谷幕張の入試問題です。
「座」とはどのようなものだったのかについて、文の最後が組合で終わるように説明しなさい。
この問題は、「座」の意味を説明させる問題です。歴史の基礎知識ですので、多くの受験生に馴染みがあるでしょう。
たとえば、サピックスのコアプラス社会には、次のような問題が掲載されています。
鎌倉時代から室町時代にかけて成長した、商工業者の同業組合を何といいますか。
コアプラスをこなしていれば、しっかり得点できる問題ですね。
しかし、「一問一答」を答えられるようにするだけでは不十分なのです。
「座」という言葉を答えられても、「座」という言葉からその意味を説明できない受験生は、実際多いはずです。
「一問一答」の落とし穴は、「用語」を答えられるようにすることだけが目的になってしまうことです。
用語を答えられるだけでなく、本来は、その意味も説明できるようにならないといけないのです。
ただ、用語を説明する力は、そう簡単には身につきませんので、コアプラスのような一問一答の問題集はは、最低「一問三答」化するくらい使いこなさないといけません
え?どういうこと?
後ほど詳しく説明しますね。
気になる方は、次の項目は呼び飛ばしていただいても構いませんよ。
(でも読んでほしい…)
なお、歴史は、このほか用語を答えさせる記述問題で「中尊寺」「朱子学」「青木昆陽」「伊勢参り」など、いずれもコアプラスに掲載されているような基礎知識をそのまま答えさせる問題も多く出題されています。
こうした基本問題を確実に得点することが大事で、逆にこのような基礎問題を落としてしまう学力では、渋谷幕張の合格は難しくなります。
結局、大切なのは「基本」なのです。これはどの学校の対策でも同じですね。
思考力も問われる地理
続いて、地理も見ていきましょう。渋谷幕張の問題は、地理・歴史・公民、ほぼ等しい割合で出題されます。
公民も、歴史同様に、基本的な知識があれば答えられる問題と、思考力を問う問題に二分しました。
火山は…人間生活にさまざまな恩恵をもたらします。
という一文の関連として、「火山周辺に建設された施設」を答えさせる問題の答えが「地熱発電所」であることは容易に想像がつくでしょう。
北海道と沖縄県を除く45都道府県のうち、産地を都府県境とする部分が存在しないものが1つあります。その都府県名および、おもに何を都府県境としているか(固有名詞)を答えなさい。
という問題も、「千葉県「利根川」「江戸川」までなんとか答えたいところです。
一方で、「カール」と呼ばれる地形がどのように形成されたと考えられるか答えさせる問題など、難解な問題が紛れ込んでいます。
多くの受験生が「知らない問題」は、解ければアドバンテージになりますが、解けなくて全く問題ありません。逆に基本問題を落とすと、差は開くのみです。
その意味で、少ない基本問題を確実に得点できる、緻密で正確な勉強をしてきたかどうかを問う試験だと言えそうです。
難関校に共通する出題形式
渋谷幕張の難しさ、その問われる知識だけでなく、出題形式にもわけがあります。
渋谷幕張の入試問題を見ると、次のようなものが頻繁に登場します。
X・Yについて正誤の組み合わせとして正しいものを、下記より1つ選び、番号で答えなさい。
1 X 正 Y 正 2 X 正 Y 誤
3 X 誤 Y 正 4 X 誤 Y 誤
こうした複数の選択肢の正誤を問う、正確な知識が必要な出題は、筑駒や桜蔭など、難関校でたびたび見られる形式です。
2つの選択肢の問題文が正しいかどうかを組み合わせで問う問題は、消去法で正しい答えを導き出すことができません。つまり、正確な知識がないと正解に至らないのです。
2021年の入試問題の記号問題16問のうち11問はこの形式でした。この傾向は、ここ数年変わりません。
正解した問題を含めて、徹底的にテストを復習することで、おのずと基礎力、さらには応用力が身につき、社会が得意になり、渋谷幕張のような難問にも、苦手意識を持たずに対応することができるようになるはずです。
コアプラスの使い方〜基本を着実に
渋谷幕張の社会は、平均点が低い分、「得点できる問題を確実に得点すること」が重要です。
そのために大切なのは、コアプラスのような一問一答の問題集を確実に解くことです。
さきほど述べた「一問三答」化するとはどういうことなのでしょうか?
説明していきましょう。
たとえば、さきほどの歴史問題で出題された、「座」に関する問題。
コアプラスには、
鎌倉時代から室町時代にかけて成長した、商工業者の同業組合を何といいますか。
(答)座
という問題が掲載されています。
第1段階は、「座」という用語を答えられるようにすることです。
これは、すべての受験生にとって必須です。
「コアプラス」最新版は、720問、小問の数では数千問の知識が問われていますので、それを確実に回答できるようにすることです。
そして、最終的には、「座」という答えを見て、問題文を言えるようにならなければいけません。
「左の問題→右の答え」は基本、それをクリアーしたら、「右の答え→左の問題」というように、使い方を変えるのです。
ただ、いきなりそこに到達するのは至難の業ですよね。
そこで「一問三答」化の出番です。おすすめするのはチェックペン方式です。
問題文の中で、「座」という言葉に次いで重要なのは、「商工業者の同業組合」という部分。まさに「座」の意味となるところです。そこにチェックペンを引いて問題化します。緑のチェックペンを使えば、コアプラスについている赤シートで隠せますね。
次に問われそうなのが「鎌倉時代から室町時代」という部分ですね。年代問題に対応するものです。そこは赤のチェックペンでラインを引いておけば、あとで緑のチェックシートで隠すことが出来ます。
赤と緑のチェックペンで1箇所ずつラインを引いて問題化することで、この問題は、3通りの解答ができるようになるわけです。1粒で3つおいしい問題に変えることができるというわけです。
コアプラスのような1問1答の問題集、繰り返すことが大事なのですが、何度も解いていると、「本当の知識」ではなく、問題の配列などで答えを覚えてしまうことがあります。「この問題の次の答えは○○」といった感じで…。
チェックペンなどで、さまざまな使い方をできるようにすれば、複数通りの形で問題に臨むことができるので、理解力を深めることが出来ます。
さきほど述べたように、理想は、答えの用語を見たら、問題文を自分で誦じられるようにすることですが、一朝一夕にはいきません。
チェックペンを活用しながら、少しずつ理解を深め、それを繰り返していけば、最終的には自分で言葉の説明が口から出てくるようになるはずです。
もちろん、チェックペンを使わなくても何度も問題文を読めば、答え以外の知識も深まるとは思います。ただ、実際に問題を解かないと、知識の確認は難しいものです。
千里の道も一歩から。
よく、知識が足りないからと、あらゆる問題集に手を出したがるご家庭がありますが、それは一番やってはいけないことです。
大学受験で「詳説日本史」など、有名な教科書1冊を徹底的に勉強した経験がある方も多くいらっしゃると思います。
良いテキストは、使い方しだいで、何倍にも効用を発揮します。
サピックス生なら「コアプラス」、四谷大塚や早稲田アカデミー生なら「四科のまとめ」でも構いませんが、自分はこれを使う!と決めたテキストをしゃぶりつくす、ある意味貪欲な、言葉を変えると精緻な勉強が、難関校対策の即効薬なのです。
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