筑駒 開成と同じ問題も !コアプラスで一定程度は対応可能だが手強い挑戦状 2021筑駒中学社会の傾向と対策

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中学受験
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男子私立の最難関開成中学と、定員120の狭き門で東大合格率で他を寄せ付けない超がつく難関校筑波大学附属駒場中学。今年の社会では同じ問題も出題されましたが、問題のタイプは全く異なります。
まず、筑駒の入試問題は、合格実績の高いサピックスを含めて、塾には十分な対策をとれるだけの能力はありません。筑波大学の威信をかけた塾業界への「挑戦状」とも言えます。
併願する受験生も多い開成と筑駒ですが、その傾向と対策は?。SAPIXから出版されている『コアプラス社会』のような参考書で対策はとれるのか?
開成編に続いて、筑駒の入試の最速分析です。

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【総論】1問の取りこぼしが命取り、開成の約半分の問題数

筑駒の社会の特徴は、その問題の少なさです。

解答欄のベースで26問。開成の問題数は57問ですから、開成の半数以下。
筑駒は、各科目100点満点ですので、1問4点程度ということになります。
さらに特徴は、26問中24問は記号問題であることです。そのうちの13問は2個以上の選択肢を選ぶ複数解答の問題です。

記述問題を苦手にする子が多いかもしれませんが、難しい問題をつくれるのは、記号問題です。

特に複数解答の問題は、正確な知識がないと解けませんので、もっとも警戒すべき問題なのです。

1つ1つの知識を正確に記憶しているか、あいまいなまま放置しているかのちょっとした差で、1問取りこぼすと、即座に4点の失点につながるわけです。
これの積み重ねで、大きな得点の差が生まれてしまいます。

筑駒の難しさの所以は、とりこぼしのない、正確な知識が求められるところ

1問程度のケアレスミスやど忘れさえも許されない。ここまで緻密さが求められる問題を出題する学校はほかにありません。

では、地理・歴史・公民の問題を具体的に見ていきましょう。
問題文は、インターエデュなどからご覧ください。

基礎知識以前の「常識問題」と時事問題

コアプラス対応度:2/8

「羽田新ルート」に関する文章を読ませ、その問題点や東京周辺の地理などを問う問題です。

数少ない基本問題を確実に

コアプラスに掲載されているような基礎知識で解ける問題は、わずか8問中2問です。

大問1の1問目は、

1年で最も都心低空飛行ルートが採用される可能性が高い時期を1つ選びなさい。

問題用紙2ページにわたる文章や図から、都心低空飛行ルートは、「南風が吹く」時期に多いことを読み解かせた上で、季節を答えさせる問題です。

実は、2日前に入試が行われた開成中学では、「7月ごろの季節風の向き」を答えさせる問題が出題されていました
夏の季節風は、「南東」であることは、「コアプラス」にも掲載されている基礎知識ですよね!

問われている知識そのものは「季節風」で、いわゆる基本的な知識ですが、単純に冬と夏の季節風の向きを記憶しているだけでは解けず、小学生にとってはいきなりかなりの難問に映るかも知れません。

もう1問、基礎知識が問われたのが、日本の工業地帯に関する問題です。

ア 製鉄や石油工業は、海に面した場所に多くつくられている
イ 工業地帯・地域別の工業生産額は、京浜工業地帯が最も多い
ウ 関東内陸工業地域では、重工業よりも軽工業の生産額が多い
エ 精密機械工業は、地方の空港や高速道路沿いに多くみられる
オ 北陸工業地域では、食料品の生産額が最も大きくなっている

この中から、正しいものを2つ答えさせる問題です。
筑駒の問題は、冒頭に述べたように、複数解答の記号問題が選択問題の約半数を占めます。
つまり「組合わせ」「セット」を問う問題は、より正確な知識を問うことができやすいのです。

複数解答の問題は、子どもも苦手で…

5問中1問を選択させる問題がカンで正解する可能性は20%
2つの組み合わせ問題がカンで正解する可能性は10%

単純に2倍の難易度の問題にすることが可能なのです。

問われている知識は、工業生産額が最大なのは中高工業地帯であること、関東内陸工業地域は機械工業が多いこと、食料品の生産額が最大なのは北海道であることなど、コアプラスレベルの知識を正確に身に着けていれば身についている知識です。

こうした基本問題を着実に得点できないと、筑駒の合格は厳しくなります。

というか不可能です。

常識も問われる時事問題

ことしはコロナ禍で学校の休校措置がとられたことから、国立大附属である筑駒では、都立の中高一貫校などと同様、出題範囲に制限が設けられました

6年生で学習する内容のうち、教科書中の次に挙げる内容を出題範囲から除外します。
・東京書籍、教育出版の教科書のうち「世界の中の日本」
・日本文教出版の教科書のうち「世界の中の日本と私たち」
ただし、時事問題は出題します。

「時事問題は出題します」とあるとおり、今年も時事問題が出題されました。
そして、その時事問題も、基礎知識をもとに「常識力」を問う問題であることが特徴です。

たとえば、

ア 2019年に日本を訪れた旅行者を国別に見ると、中国からの旅行者が最も多い
イ 日経の外国人旅行者は、パスポートを見せることなく日本への入国ができるようになった
ウ 増加する外国人観光客の宿泊施設の不足を補うため、民泊に関する条例がつくられた
エ 新型コロナウイルス感染症の拡大で海外旅行がサケられたため、2020年の国内旅行者数は前年に比べて増加した
オ 新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、外国人観光客を誘致するため、GoToトラベルキャンペーンが実施された

このなかで正しいものを2つ選ばせる問題です。
国別の訪日外国人旅行者でトップが中国なのは、基礎知識です。サピックスなどでは、夏以降、「データバンク」などの教材で統計・資料問題を集中的に学習する機会があり、必ず学習する内容です。
一方、2020年の国内旅行者数の統計は当然誰も知りませんが、国内旅行者が急減し、観光業から悲鳴が上がっていることは、親とニュースに接していれば、推測の就く話ですし、GoToキャンペーンが国内観光客を対象にしていることもわかるでしょう。
実際、受験生のいる家族は受験勉強で旅行どころではなく、GoToトラベルを活用した受験生は少ないかもしれませんが、こうした時事問題に日頃から触れることは非常に大切です。
そのうえで、日本人でもパスポートを見せないで入国できることはないといった「常識」があれば、消去法で選択可能なはずです。

筑駒は、小学生としては最高レベルの「常識力」が問われます。
受験勉強も大切ですが、特に5年生までの間は「よく遊び、よく学べ」で旅行を含めてさまざまな経験を重ねることが合格への近道にもなるのです。

 

とにかく資料の読み込みが大変な歴史問題

コアプラス対応度:9/12

歴史の問題は、ウシ・ウマ・イヌに関するグループ発表内容に関する資料を読み、その内容を問う問題です。「グループ発表」に関する問題は、筑駒では頻出です。つまり、資料の読解問題は筑駒の問題の定石です。

コアプラスレベルで対応可能な基礎知識

筑駒の歴史の知識を問う問題は、地理に比べると易しい傾向があります。

歴史は分量が多いから大変だからそれは助かるわ。
なんでなの?

それは、筑駒は国立大附属のため、学習指導要領の範囲、教科書の範囲からしか出題しないからです。

地理の場合は、地理帳も含めた出題になりますので、膨大な資料が出題範囲となり、かなり細かい知識を問うことも可能になります。しかし、歴史は教科書レベルを完璧にすれば、知識問題については必ず解けることになります。

とはいっても、注意をしなくてはいけないのは、教科書本文の重要事項だけを覚えてもいけないということです。年表やさまざまな資料など、教科書の隅から隅までくまなく読み込むことが大切です。

大学受験で日本史を選択されていた方は、山川出版社の『詳説日本史』などを隅から隅まで学習しませんでしたか?筑駒に求められる勉強方法も、実はそれと同じなのです。

 

ただ、問われる知識そのものは難しくないものの、筑駒の問題は知識を当前提とし資料の読み込み→知識を問う、という順序のために、資料が正しく読めなければ、知識以前の段階で正解にたどり着けないのです。
とにかく基本は、正しい資料の読み取り力を身につけることです。

実際に問われた知識は、
(1)平安時代に起こった2つの合戦を通じて、勢力を伸ばした。
(2)ウマや金などを納めながら朝廷との安定した関係を気づいていた。
(3)源平合戦ののち、源頼朝に滅ぼされた。

という3つに当てはまる一族が建立した寺社名を答えさせ、さらにその位置を白地図から選ばせるものでした。

多くの筑駒受験生は(3)だけで「奥州藤原氏」という答えにたどり着けそうえすね。「中尊寺」の金色堂は基本知識だから。

このほか、年代を問う問題も、合わせて6問出題されています。
大化の改新や東大寺の大仏の開眼式、平安京への遷都、近代では大日本帝国憲法発布、男子普通選挙などの年代を把握している必要がありました。

直接に年代を答えさせる問題は出題されませんが、正確に、そして早く正解に至るには、基礎的な年代は暗記しておく必要があります。
筑駒の受験生は、開成など他の難関校の受験対策をしているはずですから、私立に向けた対策をとっていれば、歴史の知識に関してはさほど問題にはなりません。

資料読み取りはスピードも大切

筑駒の受験生に必要なのは、高度な「事務処理能力」です。
言うならば財務官僚に求められる能力のようなかんじですかね?

資料問題は、「発表の内容」を問う問題なので、多くは特別な知識がなくても解けますし、知識で補充する必要がある問題も、問われる知識はごく基本的なものです。
ただ、冒頭に述べたように、筑駒の問題は、複数解答が多いため、選択肢が5つの場合、5つすべてに目を通す必要がある場合がほとんどです。正解を1つ見つけて、あとの選択肢は読まないという時短がなかなか通用しません。
特別なトレーニングは必要ありませんが、6年生の夏以降、過去問をしっかり解いて、スピード感覚を養っておくのが重要です。

公民は「大人な問題」

コアプラス対応度:5/6

11歳の少年が起こした自転車事故をめぐり、意識不明の渋滞となった女性が、少年の母親に1億590万円の支払いを求めた実際の裁判に関する、2000字を超える問題文を読み、権利や裁判に関する知識や理解を問う問題です。

権利や義務の理解力を問う「難問」

大問2までで多くの受験生はかなり頭を使っているはずですが、最後の公民はかなりの難問です。

問題文が、責任能力がない少年が自転車を起こしたときの監督責任という、大学の法学部の試験にそのまま出てきそうな文章です。

 

知識を問う問題についても、正しくないものをすべて選ばせるなど、非常に難解です。

ア プライバシーの権利は、日本国憲法に明記されていないが、裁判では認められている。
イ 裁判を受ける権利は、国民の基本的人権として日本国憲法で保障されている。
ウ 太平洋戦争後に地域の若者たちがまとめた五日市憲法には、国民の権利についてくわしく書かれている。
エ 国際連合は、障がい者の権利を市民が守ることを義務付けた障害者権利条約を採択している。
オ 子どもの権利条約で、子どもには自由に自分の意見をあらわす権利があることが示されている。

五日市憲法が明治初期のものであることや、プライバシー権利が「新しい人権」であることなど、単に用語を知っているだけでなく、用語の意味や背景まで含めて理解することが大切です。

出てくる用語は難しくはなくても、いくらでも難しい問題は作れてしまうのです。それが筑駒クオリティ!!

公民でも問われる時事問題

また、公民でも時事問題が出題されており、その内容は、塾から毎年秋に出版される参考書では必ずしもカバーされません

  • 香川県では、子供のゲーム利用時間を制限するよう保護者に求める条例が施行された。
  • 川崎市では、ヘイトスピーチをした人に刑事罰をかす条例が全国ではじめて施行された。
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために、東京都や神奈川県は営業時間短縮や休業の要請に応じた事業者に対して協力金を要請した。

新聞やテレビのニュースに目を通していれば、皆さん記憶にあるはずのものばかりですが、受験対策をしていてもなかなか対応が難しいんですよね。

だんだん筑駒の狙いが見えてきませんか??

実際の問題では、必ずしも時事問題の知識がなく、ほかの知識との組み合わせで正解は可能ではありますが、時事問題については、日頃から家庭で話題にするなど、「参考書頼みにしない」姿勢が非常に重要です。

塾の先生には作れない良質な問題

全体的なコアプラス対応度:16/26

塾には対策不可能な領域

コアプラスレベルの知識があれば解ける問題は、およそ6割で、ほかの問題の多くは、資料や問題文の読み取り問題のため、高度な知識がなくても、8割以上の高得点を得ることは可能なつくりになっています。

ただ、実際に高得点をとれるかどうかは別問題です!

求められる知識は緻密な記憶が必要であり、問題文が長大であること、また公民の問題文のように「大人レベル」の理解を問う問題であることから、繰り返しになりますが、短時間で処理する高い事務処理能力が求められます。

元教育大学でいまも名を教育学部が馳せる筑波大学附属の中学として、教育界のエキスパートを自負する教員たちがかなりの力を入れて作問しています。
筑駒対策というのは非常に難しく、申し訳ありませんが、サピックスを含めて塾の先生方に筑駒対策をする能力はないと見るのが妥当です。

学校別の模試でもこの入試問題レベルの問題を倣って作るのはまず不可能で、せいぜい分量や出題形式を形式的に真似ることができるにすぎません。

ではどうやって対策するのか?

それでも筑駒は、トップレベルの受験生にとって憧れの進学先ですよね。

どういった対策をとればいいのかしら?

筑駒対策の基本は、学校の教科書を大切にするということです。

塾に通いだすと、教科書を使って勉強することはまずなくなります。
しかし、教科書は大学教授ら専門家が作成したものであり、「傾向と対策」を追い求めた塾のテキストに比べてはるかに良質な内容です。

国立大附属中学の入試問題は、教科書が出題範囲なので、教科書から知らないことがなくなるくらい読み込むことが大切です。

忘れてはいけないのは、学校と塾はまったく異なる存在だということです。
サピックスなど塾での勉強は、もちろん今後の人生で役立つ場面もあるとは思いますが、あくまで中学受験という目標に向かった傾向と対策をとる場所です。一方、筑駒のような進学校は、目先の勉強を教えるだけでなく、社会で活躍する人材を育成する、教育の場です。
特に6年生になると塾の勉強が大切になるのですが、学校の授業での調べ物学習など、基本的な学習をばかにしているような生徒は求められていないのではないでしょうか。

そのような理解のうえで、筑駒に合格したい受験生は、開成など2月1日に受験する学校の対策をきちんとやりましょう。そうすることで、対策をとりにくい筑駒にも対応できる、総合的な学力が身につくはずです。

とにかく大人でもとっつきにくい、筑駒の「挑戦状」。
受験対策をしても無駄だよ、一朝一夕で学力なんて身につかないよ、という筑駒のメッセージでもありそうです。

なお、筑駒対策の基本が身につく、SAPIXから市販されている教材は以下のとおりです。



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