筑駒は「教科書」から出題。塾のテキストからは出題しません! 全受験生が改めて確認したい「基本」とは

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中学受験
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男子最難関の筑波大学附属駒場中学。国立大学附属なので、入試は学習指導要領に基づいて出題されます。つまり、出題範囲は「教科書」です。
しかし、難易度は首都圏トップ。筑駒の問題を苦手とする受験生は多くいます。
筑駒の先生は、サピックスのテキストを見て出題するわけではありません。むしろ筑駒の入試問題は、筑波大学の附属学校という「教育研究開発機関」からの塾教育への挑戦状とも言えるような内容です。
『基本』だから『難しい』、本質的な学力を問う筑駒の入試問題。

「元サピックス講師」が、塾偏重の学習への警鐘の意味も込めて、知識の比重が大きい科目、社会の2021年筑駒の入試問題で検証します。

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塾のテキストを絶対視していませんか?

中学受験をしようと思ったら、関東の方でしたら、ほぼ全員の方がサピックス・早稲田アカデミーや日能研・四谷大塚などの進学塾に通います。
塾では、学校よりも早いスピードで、学校では習わないような難しいことを教わります。
たしかに、塾通いしないで中学受験に取り組むのは、ほぼ不可能なことです。でも、

塾で習うことを絶対視しすぎていませんか?
学校の勉強を疎かにしすぎていませんか?

たとえば、塾では、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」などを、まだまだこれからも出題される「時事問題」として扱うことがあります。

「これは出る!」と塾の先生も自慢げ実際に出ると、塾の先生は「当たった!」と自分の分析力を誇示します。

たしかに、2015年というのは、つい6年前。いまの大学生が小学生のころはまだ存在しなかったもので、新しい出来事、時事問題ではあり、要注意の項目ではあります。しかし、

ことし入試を迎えた6年生が使用した、6年生の教科書では、ほぼ1ページを割いて説明されています(東京書籍「新しい社会 6 政治・国際編」)。

「持続可能な開発目標」という言葉も、「持続可能な開発サミット」が開かれたことも、国際連合「ニューヨーク」にあることも、この目標が「2030年までの行動計画」であることも、さらには、その目標の内容が「1日1.25ドル未満で生活する人々をなくす」ことも…。
ともすると、受験生がバカにしているかもしれない学校の教科書にしっかり掲載されているのです。
前後のページを見渡せば、2012年から2017年まで自衛隊が「南スーダンにおいて道路の整備などを行っていた」こと、それが「国連の平和維持活動であること」など、塾で習うような、2010年代の出来事が、教科書にはしっかり掲載されています。

学校の教科書は大学教授複数人を代表著者として、筑波大学附属小学校の教諭なども含む数十人の学校の先生がつくったもの
受験特化はしていませんが、検定を通過するまで塾の教材よりはるかに多くの人の知恵が集まった1冊です。

そして、国立である筑駒の出題範囲は「学習指導要領」、つまり学校の「教科書」の範囲で出題されます。

塾の勉強は大切です。最終的には、受験勉強で最も頼りになるのは塾の教材です。
しかし、塾では学校よりひと足早く新学年が始まった今、学校でも習う、「基本」とは何か? 一度立ち返りたいと思います。

国立大学附属の筑駒

筑波大学附属駒場高校中学は筑波大学の附属学校です。
教育機関であると同時に、『教育研究開発機関』でもある国立大学の附属高校の使命について、ウェブサイトにはこう記されています。

国立大学の附属学校には、2つの大きな使命があります。
1つは教育に関する研究や教育実習の実施に協力すること、もう1つは「国の拠点校」「地域のモデル校」として、日本の初等中等教育における研究開発を実践していくことです。
筑波大学の附属学校では「先導的教育」「教師教育」「国際教育」の3つの教育において、国の拠点校をめざしています。

そして、教育課程については、こう記されています

まず、各教科とも基本をしっかりと学習します。これは単に基礎的な知識を記憶するということではありません。さまざまな物事に対する見方・考え方の基本を身につけるということです。学習の方法は自分に適したものを作り出す必要がありますが、はじめから自分勝手な学習方法では、将来大きく才能を伸ばすことはできません

ー「自分勝手な学習方法では、将来大きく才能を伸ばすことはできません」
結構、耳の痛い言葉ですね。

筑駒は、入試問題も、知識の多さではなく、知識をいかに活用し、応用につなげるかという、「本質的な学力」を身に着けているかどうかを問うものになっています。 小手先の知識は通用しないから難しいんです。

筑駒の「学力検査」は”範囲”が示されている

筑駒の入試問題は、国立大学附属学校として、学習指導要領の範囲内で出題されます。
さらに、2021年の入試は、コロナ禍で学校の休校があった関係で、「出題範囲」にも制限が加えられました。

社会
6年生で学習する内容のうち、教科書中の次に挙げる内容を出題範囲から除外します。
・東京書籍、教育出版の教科書のうち「世界の中の日本」
・日本文教出版の教科書のうち「世界の中の日本と私たち」
ただし、時事問題は出題します。

教科書で解ける、その意味とは

実際に筑駒の問題は「学習指導要領」の範囲内で、どのように出題されるのかしら?
「小学校の教科書」さえ学習していれば、すべての問題を解けるのかしら?

塾のテキストを学ぶ多くの中学受験生は、小学校の教科書で受験対策をする受験生は皆無でしょう。
しかし、1日の大半を過ごす学校での学習の時間も、中学受験を意識して、意識的に活用することは可能です。
教科書のどういったところに注意を払って、有意義に時間を過ごせばいいのか、筑駒の問題は、そのヒントになるはずです。

では、ようやくですが、2021年の入試問題を検証してみましょう!

なお、本サイトでは、著作権等の関係で、過去問は、一部の引用にとどめております。
過去問は、さまざまなサイトに掲載されていますが、四谷大塚の「過去問データベース」をおすすめしています。

地理

最初は地理の問題。2020年に始まった「羽田新ルート」に関する問題文を読ませて、知識や思考力を問う問題です。

7問あった小問のうち4問は、知識が必要になる問題。
残りは、文章の読解力、分析力を当問題でした。ここでは知識問題を見ていきましょう。

季節風に関する問題

1問目は「1年の中で最も都心低空飛行ルート」が採用される可能性が高い時期、つまり南風が吹く時期を答えさせる問題です。問われているのは「夏の季節風」。受験向けに習う印象も強いですが、日本で最も使われる検定教科書、帝国書院の「楽しく学ぶ小学生の地図帳」の資料コーナーにも掲載されています。

小学校で使う地図帳は、ちゃんとした文部省検定教科書ですよ

日本の観光に関する問題

この問題で必要だった知識は、国別の訪日外国人数。お子様は、トップ5を言えるでしょうか?

これも塾では習いますが、「地図帳」、すなわち教科書にも掲載されている知識です。

さらに、「地図帳」には、日本で暮らす外国人の出身地や、訪日外国人の人数の変遷、日本から外国への旅行者数の推移などのグラフも合わせて載っていますし、さらには、中学受験特有の対策として習いそうな、過去にオリンピックが開かれた外国都市の一覧まで掲載されています。

日本の工業地帯に関する問題

次に知識として求められたのは、「工業地帯・地域別の工業生産額は、中京工業地帯が最大である」「関東内陸工業地域は、重工業の生産額が大きい」ことの2つ。このことがわかっていれば簡単に解ける問題です。
中学受験では頻出の内容ですが、これも、「地図帳」に載っています
工業地帯別の生産額は、グラフの一覧がありますし、「関東内陸工業地域」周辺では自動車関連産業が盛んであることが、イラストで記されています。

中学受験に必要な知識、少なくとも社会に関しては、教科書にもかなり載っているということです。
ただ、小学校で先生から「これは覚えましょう」と言われるレベルだけでは足りないということです。
筑駒も、あくまで、掲載されている資料すべてが出題対象となっているわけです。

基本的には、塾のカリキュラムは学校より先行しています。
塾のテキストで基本を網羅的に学習→学校で地図帳を開いた時に塾で習った知識を思い返しながら1つ1つ復習すれば、「地図帳」はかなり有意義に活用できます。
サピックスなど多くの塾で採用されている「らせん式」の学習方法は、学校の授業を含めて行えるのです。

「受験対策は塾でしかできない、学校の授業は簡単過ぎる」と頭から決めつけるのではなく、学校の教科書を有効に活用する意識を持つかどうかで、学習の効率は格段とアップするのです。

ドイツと香港に関する問題

さきほど、2021年の出題範囲をご紹介しましたが、この中に「ただし、時事問題は出題します」との記述がありました。重要なのはこの部分です。

「時事問題」として出題すれば、「教科書」の範囲を超えた出題が可能になるのです。

ことしの筑駒の地理問題で時事問題として問われたのは、以下の知識です。

・2016年の国民投票の結果をうけて、2020年末のEUから離脱決定したのは「イギリス」
・2018年に折居ピックが開かれたのは「韓国」

この2つがわかれば解けた問題でした。
このほか、選択肢には、香港で「2019年の逃亡犯条例改正案への反対からデモが始まり、2020年に入っても継続した」ことや、アメリカでは「2020年に大統領選挙が行われ、バイデン氏が時期大統領となることが決定した」ことなども含まれています。

早期からの時事問題対策の必要性については、こちらの記事にも記していますが、筑駒に限らず、多くの学校で「毎年、必ず」時事問題は出題されますので、早いうちから家庭でニュースに触れておくことが肝要です。

歴史

歴史は、社会の授業でウシやウマをテーマに調べ物学習を行い発表したというシチュエーションで、発表内容を読みながら理解力を図り、合わせて歴史の知識を問う問題でした。

奥州藤原氏に関する問題

・平安時代に起こった2つの合戦を通じて勢力を伸ばした
・ウマや金などを納めながら朝廷との安定した関係を築いていた
・源平合戦の後、源頼朝に滅ぼされた

これらの内容の記述から、「奥州藤原氏」に関する説明であることを突き止め、その上で、この一族が建立した寺社の名称と場所を答えさせる問題です。
答えは岩手県にある平泉の「中尊寺」です。

筑駒のある世田谷区で採択されている、東京書籍の教科書「新しい社会」では、平泉に関して「世界遺産を調べよう〜平泉〜」と称して、2ページにわたって詳しく記しています

平安時代東北地方二つの合戦が起こり、…藤原清衡が勝利し、…中尊寺を建てました。…清衡の思いを受け継いだ基衡は…豊富に算出される他の地域との交易で得た財力を生かして、毛越寺を建てました。

このほか、中尊寺金色堂に藤原清衡、基衡、秀衡の遺体が納められていることなど、「厚い金箔をはり、夜光貝で螺鈿されている」という説明と写真とともに詳細に記されています。

学校の教科書だって、これだけ事細かに説明しているんです。
毛越寺って知っていますか?
教科書のレベルは決して低いわけではないんですよ。

ちなみに、多くの受験生が活用するサピックスの『コアプラス』では、

奥州藤原氏は、現在の岩手県平泉を本拠地として栄え、中尊寺金色堂は、内部・外部ともに金箔がはられ、奥州藤原氏の栄華の様子を伝えている。

といった内容を問う問題が1問掲載されています。


 

つまり、学校の教科書は、コアプラスよりもはるかに詳しく平泉について記載されているのです。
そして、筑駒の受験においては、「教科書」が出題範囲である以上、教科書に記載されている内容を隅から隅まで読み込むのが大切です。

年代問題

筑駒は、毎年、年代問題も出題されています。
ここまでの説明で、年代問題については、教科書の「年表」に載っているレベルのものは当然に問われることはご理解いただけると思います。
おそらく多くの受験生は、たとえばサピックスの『年表トレーニング』などを使って、年代の記憶や歴史の基礎固めに勤しんでいると思います。

一方、学校の教科書に載っている年表も、バカにする必要はありません。
筑駒という超難関校の入試対策には十分役立つのです。

たとえば、東京書籍の教科書の年表は、B4表裏の2ページに収まるレベルです。掲載されている項目は少ないですから、これを両面コピーして、たとえばトイレでいつでも確認できるように貼っておくなど、教科書も知識の確認用にはいかようにも活用できるはずです。
歴史が苦手な受験生にとっては、分量が少ないぶん、基本のおさらい用としてもちょうどいいレベルです。

ちなみにですが、東京書籍の歴史教科書の著作者の中には、筑波大学附属小学校の先生も2人加わっています。

基本的に塾では5年生で歴史を学習、小学校では6年生での学習になりますから、6年生になって学校の教科書をもらったころには、受験生は、一通り、受験の学習は終えているはずです。
学校の授業を、適当に受け流すのではなく、教科書の隅から隅までを見て、自分が知らないことは本当にないのか?確認する意味は十分にあるのです。

教科書本文に記載されている内容は、さすがに基本的すぎると感じるかもしれませんが、たくさん掲載されている写真資料とその説明は、塾での学習から漏れているものもあるはずです。
地理の地図帳と同様、学校の教科書は「資料」を中心におさらいすると、知識の補強につながります。

公民

そして、最後に公民です。

こちらの記事でも触れましたが、小学5年生の少年が自転車で女性をはね、女性側が少年の母親に約1億590万円の支払いを求めて起こした実際の裁判をもとに、法的責任や裁判の仕組みについて問う問題です。

とにかく問題文の内容が難しい!
大人でも読むのも難しくて、正直ここが筑駒の難しさなんですよね。

裁判の基礎知識

とはいえ、このうち、裁判に関しての知識問う問題はそれほど難しくありません。

「民事裁判では裁判員裁判は取り入れられていない」こと、「不適切なことをしたとされる裁判官をやめさせるかどうか決める弾劾裁判は国会のしごと」であることなど、「コアプラス」どころか、学校の教科書にも載っています。
難しいのは、例えば刑事裁判に関する記述の中に「過失致死傷罪」といった専門用語が出てきたり、民事裁判に関する記述でも「工場が出すけむりにふくまれる硫黄酸化物が原因でぜんそくになったとして、工場をもつ会社を訴える裁判」など、これは四日市公害裁判のことですが、具体例を交えた選択肢を読ませて判断させるところです。知識そのものは教科書レベルを問いているにすぎません。

時事問題は要注意

一方、時事問題は要注意です。さきほど、地理のコーナーでも時事問題について触れましたが、時事問題は、公民や歴史とからめて出題することも可能です。

ことしの筑駒では、ほかの選択肢との関係で、必ずしも知らなくても正解できますが、香川県のゲーム利用時間を制限する条例や、川崎市のヘイトスピーチへの刑事罰をかす条例などが出題されたほか、「ふるさと納税」は、自分の生まれ育った地方公共団体以外にも寄付できる制度であることの理解を問う問題が出題されています。

「税や社会保障」、総理大臣の交代を始めとする政治・経済の動きは、今後も、国内・国際ニュースともに時事問題として出題される可能性は十分あります。

こちらの記事で詳しく説明しており、時事問題のテキストは、前年度分を早めに購入することもおすすめしています。

学校の先生は塾のテキストから出題しない

ここまで、筑駒の問題は、基本的には「教科書から出題される」ということお話してきました。

強調してきたのは、「教科書の隅から隅まで理解しましょう」ということです。決して、教科書や学校の勉強が無駄になるということではない、むしろ厳しい中学受験にパスするためには、学校の教科書まで含めてできるだけ空きのない勉強をする必要があるのです。

特に留意しておきたいのは、塾は入試問題の分析は得意としていますが、ほとんどの塾講師は学校の教科書など見たことはないはずです。学習指導要領もネットで簡単に閲覧できますが、一度も眺めたこともない人がほとんどでしょう。
つまり、「学習指導要領」=入試問題の「幹」となる部分 を理解しないまま、入試対策を行っているケースがほとんどなのです。

一方で、中学校の先生は、皆さん教員免許を取得し、いくら私立とはいえ、学習指導要領は理解したうえで、独自の教育を行っています。決して、幹を知らずに難しいことを教えているわけではありません

塾では、その点を見誤って、学校の教科書には載っているのに、「これは新しい」「難しい」とピントのずれた分析が塾のガイダンスなどでなされるケースがあります。

とはいえ、現実的には塾の学習によって成績は大きく伸び、最後の最後まで塾中心の受験勉強が続くケースがほとんどです。

決して「教科書」だけで勉強しましょうと言いたいわけではありませんが、筑駒のように「教科書」からも十分難問は作ることは可能です。

「知識」を身に着けているだけでは解けない、「本質の理解」を問う問題こそが、多くの受験生を悩ます難問なのです。
筑駒のような「本質の理解」を問う問題への対策は、一朝一夕にはいきませんが、日頃から暗記に頼らず、自分の頭で考える習慣を身につけ、自発的に「なぜ?」を解決していく学習姿勢を身に着けさせることこそが合格への一歩となります。

教科書は学校で無償で配布されるほか、一般の書店を含む教科書販売書で購入することができます。インターネットで検索すれば、地域の販売書を調べることができます。
ちなみに、東京・大久保の「第一教科書」は、塾関係者や学校関係者が個人でもよく使う有名なお店です。
なお、例年3月は年度の切り替わりのため、多くの販売店で教科書の販売を停止しますので、販売時期はご注意ください。

最後に、筑駒のウェブサイトの一言をもう一度掲載しておきます。
筑駒の受験生に限らず、すべての受験生と親が頭に入れておきたいメッセージです。

基本をしっかりと学習…これは単に基礎的な知識を記憶するということではありません。さまざまな物事に対する見方・考え方の基本を身につけるということです。学習の方法は自分に適したものを作り出す必要がありますが、はじめから自分勝手な学習方法では、将来大きく才能を伸ばすことはできません。

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